第12話 ささやかな家族の夜
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場で露と消えた。
直近の部下であった父の戦死に責任感を感じているシトレも、俺を実の息子のように育ててくれるグレゴリー叔父も、俺に戦場で安易に戦死して欲しくないという気持ちがあるのは間違いない。シトレは直接告げたし、グレゴリー叔父もレーナ叔母さんに反論しないところを見れば、そうなのだろう。そして両者とも、俺に対してそれとは全く逆の期待を抱いているのも確かだ。
かくいう俺も目的があって出世することを望んでいる。だからといってこの場で「早く戦場に立って武勲を上げて恩返しがしたいです」と返事できるほど、俺は脳天気でも無神経でもない。
まるで進むべき一本道のゴールに向かって、心を斟酌されることなく急かされ続けるようなものだ。原作の知識がある事を煩わしいと、こういうときこそよく思う。
「職場でいじめられない程度に、職務に精錬するつもりです」
俺はそう応えざるを得なかった。
「それに同室戦友のウィッティも近くの戦略部にいることですし。ご心配には及びません」
「あぁ、アル=アシェリク准将閣下のご子息だな。彼は気持ちのいい青年だ。閣下も後方勤務本部にお勤めだし、どちらかというと人をフォローするのに向いているから、安心だ」
「なにしろ私の高級副官ですからね」
「なるほど……彼はきっとそういう役職が向いていると思うよ」
原作ではクブルスリー大将の高級副官で、食器による暗殺未遂事件を阻止できなかった。それから彼は原作に登場していない。少なくとも統合作戦本部長の高級副官を務められる人間だ。ビュコック元帥の幕僚になっていても可笑しくない。上司を傷つけられた事を、事前に阻止出来なかったことを、悔やんでも悔やみきれなかっただろう。友人としても、戦友としても頼りになる奴と、この世界に来て知っただけにあまりにも惜しい。
グレゴリー叔父が第一二艦隊司令官に任命された時は、彼に副官になってもらおう。
そう心のメモに記帳して、俺はようやくレーナ叔母さんに許された飲酒を楽しむことにした。
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