第12話 ささやかな家族の夜
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きを口に入れたまま問いかけるにはアントニナ。その横で黙々と歳不相応な上品ぶりで箸を動かすイロナに、レーナ叔母さんの隣で悪戦苦闘しているラリサ。三姉妹それぞれが着飾って食事をする風景は新鮮だった。行儀の悪いアントニナにレーナ叔母さんからお叱りが入るのはいつもの通りなのだが。
「士官学校卒業後は、個人の功績と武勲次第で席次に関係なく出世することは出来る。だが士官学校首席卒業となれば、同じ功績を得たとしても同期の誰よりも上位に立つことができる。言うなれば同期全員がヴィクトールの下に立つことになるわけだ」
「ふ〜ん?」
「……アントニナ、お前は学業も運動神経もいいが、成績発表で一番になったことはないだろう?」
これは納得してないなと、俺とグレゴリー叔父は視線で話すと、グレゴリー叔父はかみ砕いてアントニナに説明する。そう、アントニナは自分が納得できない事があった場合、説明された理由を理解できないと、トコトン不機嫌になる若干悪い癖がある。
「そりゃあ、そうだよ……」
「仮に今後アントニナはその一番になった子と同じ成績を取れたとする。そんな場合でも一番になった子には絶対服従だ」
「え〜、やだ〜」
両手に箸を握ってドンとテーブルを叩くアントニナの少し延びた金髪に、今度はレーナ叔母さんの平手が飛ぶ。
「う〜」
「アントニナは絶対服従することになるその子の事を好きになれるかい?」
「……多分無理」
「だがヴィクトールは歓迎されたんだ。その絶対服従せざるを得ない相手から。凄い事だと思わないか?」
「ヴィク兄ちゃんが凄いことは前からわかってるもん」
前世には存在すらなかった義妹の、心を蕩かさせるこの即答に、俺はこの世界に転生できたことを心底感謝した。神様がいるなら這い蹲って御礼申し上げたい。叔父の言うことも分かるし、俺は同期から寄せられた好意に少なからず感激していたが、義妹の真摯な信頼には勝てないのだ。
グレゴリー叔父はそんな俺とアントニナを見て小さく溜息をついている。レーナ叔母さんは苦笑している。イロナはシュウマイに取りかかるようだ。ラリサは首をかしげたままこちらを見ている。
「で、任地は決まったのかな?」
話題の転換の必要性を感じたグレゴリー叔父は、小さく肩を落とした後、俺に言った。
「首席卒をいきなり最前線に持って行くことはないだろうが、遠い場所となるとな……」
「校長閣下からお聞きになっていないのですか?」
「教えてくれなかった。あの方はどうも“ボロディン家”をよく思っていらっしゃらないようだ」
グレゴリー叔父の珍しく皮肉っぽい冗談に、俺は苦笑した。やはり少し酒が入っているようだ。おかしいな。ロシア系の叔父は、遺伝的にはウワバミだと思うのだが。
「統合作戦本部、査閲部統計処理課です」
俺の言葉に、グレ
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