覇王居らずとも捧ぐは変わらず
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らもに輝く光は知性の鋭さ。風は首を傾げて、ふにゃりと笑った。まるで……その瞳に彼はどう映っていますかと、問いかけるように。
「ふふ……皆と話し始めたら勝手にするでしょうね。ですが……私達では考え付かない事をするのも彼ではないかと」
期待。それが稟の“今の彼”に対する評価である。
心の在り方も、思考能力の高さも、人となりも、この軍に彼が来てからある程度は理解出来た。されども何をするか分からない、というのが稟の見立て。
予想した事をしてくるのは間違いないが、それ以上に何かしら上乗せしたりもしてくる。
個人で見える世界は、風と稟の二人だけでも違う。しかし同じく軍師である為に、似たような道筋や結果に辿り着く。
「おお、危ない危ない。変態さんの思考を読めてしまったら、風も稟ちゃんも変態さんの仲間入りしてしまう所でした」
一寸だけ視線を空に向けるも、いつもの如く彼を貶しつつ、風はゆるりと誤魔化した。
酷い言い草だ、と思いつつ苦笑を零した稟は、またゆっくりとお茶を啜り――
「あ、でも稟ちゃんは既に変態さんな事を忘れてました」
「っ! けほっ」
風からの不意打ち発言を受けて思わず咽た。
ジト目で睨みつけながら呼吸を整え、相も変わらず何を考えているのか分からない親友を苦々しげに見つめる。
「……どのあたりが、と問うてみましょうか」
「おいおい、しらばっくれるってのか? 秘密裏に街で艶本を買ってる事、皆知ってるんだぜ?」
「なっ! 何故それを――はっ」
「ははは! ボロ出したな、このむっつりめ!」
頭の上であっちゃこっちゃに腕を振って喜ぶ宝ャ。また、稟のこめかみに青筋が走った。
「これ、宝ャ。稟ちゃんはこれからの為に恥を忍んでお勉強の本を買っただけです。今か今かと待ち焦がれた憧れの人との大切な一時に失敗したくないから……だよねー?」
――ああもう!
ゆるゆると流れるくだらない方面への話題転換。にやりと笑われて、稟は一つの対処法を思いつく。
弁舌にて打ち負かすのが智者としてのやり方であるが、自分の恥ずかしい秘密を知られているからには劣勢は確定。
ならば不意を付く力押しもたまには必要だ、と。
「ていっ」
「あうっ」
風の額に痛くない程度のデコピンを一つ。追加として、これ以上二対一として喋らせないように、頭の上の宝ャをひょいと掴み取った。
さすれば、今度はコスコスと片手で擦る風がジト目で見つめる番であった。
「力に訴えるのは卑怯だ、との言は聞きません。追撃はよしなに」
ぴしゃりと言い切り、膝の上に乗せた宝ャにお茶を持たせて、つんとそっぽを向いた。二対一は受け付けないという意思表示と、次の手は譲るの意を込めて。
むーっと考え込んでいたが、
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