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乱世の確率事象改変
覇王居らずとも捧ぐは変わらず
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立てた後、どちらともなく大きく息を溶かした。

「大丈夫ですよー。お兄さんが居ますから」

 のんびり紡がれた言葉に、稟の目が細まった。

「ふむ……今の秋斗殿がこの混沌とした士気を纏められるとでも?」

 噂に聞く黒麒麟ならば出来たやもしれない、と稟は考える。
 徐晃隊を作り上げた影響力の片鱗は華琳の親衛隊を変えた事を見てもあるだろう。しかし今回は大軍である。役不足感が否めない為にそれへの期待を斬って捨てた。

「曹操軍全ての士気を纏めて上げるのは一人では出来ませんよ。それこそ華琳様くらいしか」

 同時に二人は遥か前方を見やった。兵を率いている五人の将の背を頭に浮かべながら。
 春蘭は華琳が到着するまでの間の大将を任せられている。不安を感じておらずとも、居ないならば余計に華琳の為に、といつも以上に力が入っているだろう。
 秋蘭は軍全体の把握を任されている。いつも通りだ、と思っていようとも、いつも居てくれる主の不在に、日が経つと共に増える負担を頭の隅に描いているだろう。
 凪と沙和は、将としての姿を見せてはいるが、出立の時に若干のぎこちなさを見せた事から分かる程、華琳の不在の大きさを兵と同じように感じて、心に陰りを齎しているだろう。
 季衣と流琉は言わずもがな、主を守護する為に戦うでなく、主にどこそこの補佐をしろと命じられたでも無い。一人の将として戦場に立つ為に緊張しっぱなしである。
 そして霞は……先の事があるから、普段と同じ軽さを見せていようとも、内面に哀しみの楔を埋め込まれてしまっている。

 皆の心情が手に取るように分かる。まだ一年と経っていないが、稟も風も、己が軍の主要人物達がどんな状態か、繋いだ絆から把握していた。

「お兄さんは幼女趣味の変態さんですが、春蘭ちゃんと喧嘩して肩の力を抜かせたり、秋蘭ちゃんの仕事を勝手にやって軽くしたり、凪ちゃんと沙和ちゃんにどうしようも無い話をして呆れさせて気持ちを落ち着かせたり、季衣ちゃんと流琉ちゃんを連れ回してそれとなく勉強させたり、霞ちゃんと一緒にお酒を飲んで澱みを流したり……してくれたらいいですねー」
「……随分とまあ、多くの仕事を彼に押し付けるつもりに聞こえますが」
「いえいえ、風は何にもしませんよ? お兄さんが勝手にするんじゃないかなーって思ってるだけなのです」

 よく言う。
 心の中で呟いて稟は笑みを浮かべた。
 思考の誘導は風の十八番。例え彼がせずとも、風がそうするように促すのは目に見えていた。心配も余りしていないから風の本心でもあるのだと、彼女が持っている彼への評価も知る。
 華琳の代わりに将達の心を慮るのは軍師の役目。それも間違わずに受け取ったが……稟の彼に対する評価は少しばかり違う。
 エメラルドの瞳はサファイヤを覗き込む。どち
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