覇王居らずとも捧ぐは変わらず
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う、なんて考えてるんだと思う。
あそこには古くから仕える臣下が多いし、知識層の部下達は多大な恩を劉表に感じてるはずよ。武官が暴走しなくても劉表の死期が近いなら、そういった者達が兵力を持つ小勢力に焚き付けを行う可能性は高い。分かり易い言い方をするなら……主の命ある内に報復を、恩を返せなくなる前に奉公を……最も嫌う武力を智者達が振るってしまうくらい、劉表が荊州に与えてきたモノと、漢への信仰は大きいから。
それに対して、後継問題で不和が出てたなら欲の強い者達もある程度は飼いならしていたでしょうね。抑えが無くなったなら、声高らかに忠義を示しながらも自分達が権力や地位を得る為に喜んで参加する。劉協様の、ううん、漢の皇帝の威光はもう……連合が組まれた事で野心旺盛なモノ達を抑えきれない程度になっちゃったから。きっとその背反する二つを扇動して率いるのがねね……陳宮と飛将軍よ」
ねねの名を呼び直した事で、二人共が悲痛な面持ちに変わった。それでもぎゅっと拳を握って耐えている彼女達を、秋斗は目を瞑って見ない事にした。
「連合の発足は陳宮達の行いによってうやむやになるのは間違いない。その後に、部下の責任を取るカタチで劉表は劉協様の前で詮議に掛けられるでしょ。華琳に……裁量を任せるカタチでより多くの時間を割かせる。どうしようもないくらいに掻き乱される大陸の中で、唯一着々と手を進めて行けるのは桃香……劉備だけ」
都で各勢力の情報を一手に受けていたのは詠。政略の駆け引きに一番触れてきたのも彼女である。経験という財産によって劉表の狙いを正確に読み取れる彼女の力は大きい。
漢の臣として尽力していたのは彼女とて同じであり、月と共にその威光に縋ってもいた。
いざ踏み入れてみれば、内部の実情は薄ら昏い暗殺と策謀が渦巻く泥沼の権力闘争が待っており、名と誇りを欲望の汚物に塗れた靴で踏みにじられたわけだが。それでも……董卓軍は帝の為に戦ったのだ――――史実とは違って。だから詠には予想が立てられる。
荊州の部下達に劉表が示している事は黒麒麟がした事とほぼ同じと言っていい。己が身を捨てて何か行動を起こす様は人を惹きつけ、沸き立たせ、信仰になり得る。
絡まった状況を以って、部下の忠義による暴走と断じてしまう事も出来るだろう。
自身の劉の名に被せる事によって、乱世を掻き混ぜて時間を稼ごうとしているわけだ……劉備と娘が最終的な勝者になれるように。
「劉表の一手は大国である漢が行う最後のあがきに等しい。娘を向かわせた事で繋がりを持った劉玄徳が益州を正していく姿は……龍が鳳凰のように甦るかに見えて、民は希望を見出せるわ。そうして……後々に力を以って侵略を行う華琳が悪者にされていく」
「歴史を、繰り返させるというわけですか」
朔夜の言葉に秋斗はため息を落
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