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乱世の確率事象改変
覇王居らずとも捧ぐは変わらず
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意思の炎が燃え灯り、不安など欠片も見当たらなかった。将達の心にも、不安の影さえ見当たらなかった。
 入った途端、春蘭が秋斗の無礼を正す為に一発殴ると追いかけ回せば、兵にも将にも、笑いが起きた。燃え上がらせる心と共に、平穏を過ごす心も、皆は忘れず。
 幾分幾刻、あくせくと指示を出し、それぞれが来る戦の準備を整えに向かい始める。



 そんな中で、軍師の二人は軍議場に向かいながら心を弾ませていた。

「華琳様が居ない事を逆手に取って士気を上げるなんて……よく打ち合わせ無しに出来ましたね、秋斗殿は」
「これで軍としての意識が高まり、連携も潤滑に行くのは間違いないですねー。目的の明確化と意思の統一は末端まで行き届かせれば力となりますから。春蘭ちゃんと秋蘭ちゃんの性格を良く分かってるのですよー。さすがにあの駆け引きはどうかと思いましたが」
「……黒麒麟ならどれだけ――――」

 言えば、じとっと半目が見つめていた。気付いて止まった言葉の先は紡げない。

「お兄さん以外にあんな事は出来ませんよ? 皆と絆を繋ぎ始めた、黒麒麟を利用している嘘つきの大バカ者にしか出来ないのです」

 せめて人を殺す前の今だけは彼を見てあげて。揺らめくエメラルドが伝えるのはそんな想い。

「そう……ですね」

 短く答えた尻切れトンボの言葉は宙に消える。
 気まずくなる前にと話し出すのは、やはり稟。

「この戦で戻ると思いますか?」
「……風はお医者さんじゃないのでなんとも言えませんが、精神的な衝撃を受けて記憶が戻る例はあるそうです。ただ、お兄さんの場合はそのきっかけになりそうなのが人殺しか信頼の裏切りですから状況を整えないとダメでしょうね。月ちゃんの言っていた探し人は内密に捜索の指示を出してありますけど」
「与えられている指示は望んでも華琳様か雛里が着くまで戦場に出すな、ですが……」
「どっちみちお兄さんは官渡以外には行けません。月ちゃんと詠ちゃんを守る為には、此処で待ち続けるしかないのです」
「最終局面でしか有り得ない、そういう事ですか」
「です。お兄さんが耐えられるかも問題かと。その為にはやっぱり――」
「雛里が居ないと不安が残りますね」

 どちらともなくため息を落とした。

「しかし……皮肉過ぎますよ」

 ふと、思いつめたような稟の表情を見て、風は続く言葉を読み取り目を伏せる。

「この戦で重要な地点の一つ、その名が“白馬”だなんて……」

 天意を感じずにはいられない、そう零した稟の声は、今は遠き地で嘗ての彼の為にと動いている少女を想ってか、それとも旧知の友を想ってか、悲しみの色を存分に宿していた。









 曹操軍は官渡に本拠を構え、各々の部隊を割り振って防衛線の準備に
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