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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の1:昔語り ※エロ注意
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るんじゃないんですか?」
「だから悪徳なのです。彼等にとって何処をどう警邏しようが自由。宿舎に戻る事さえ守ってしまえば、途中でなにやってもいいんですよ」
「・・・そういう事。ま、万が一出くわしてもお前が居るからな、心配無いって」
「貴方達が見つかったら面倒なんですよ、説明が」

 悪徳というけったいな形容詞を何の躊躇いもなく付けられるような連中である。もしかすると一般臣民が普通は歩かぬ時間帯に関わらず自分らが居る事に、濫(みだ)りがましい欲求すら抱いて難癖を付けてくるのかもしれない。ミルカの懸念も最もなのだろう。

「少し遅れてから行きましょう。面倒事は御免です」
「そうした方が良さそうだね。すみません、パウリナさん。少々時間を食っちゃいそうです」
「いえいえ、どうかお構いなく・・・」

 パウリナは手をぶんぶんと振って、慧卓らの提案を受け入れた。提案してきた二者はそれぞれ油断なく剣に手を置いて油断無く周囲を警戒したり、壁に背凭れをついて胸元の宝玉と似た輝きを放つ夜空を鑑賞したりしている。パウリナは二人にばれぬよう、小さな息を吐いた。

(ああ・・・どうしよっかなぁ・・・もう途中で抜けられないよなぁ・・・)

 なんだかんだと旅の道連れのよう若き王国の騎士と異界人を侍り街中を歩く現状は、それはそれで貴重な体験であり歓迎すべき事態なのかもしれない。だがパウリナは盗賊稼業に身を窶|(やつ)して来た女性であり、彼らとは正反対の勢力に居る人間だ。いざ己の正体が露見してしまったら、一体何が起こるか予想できたものではない。かといって此処で離脱するというのも不自然であり、パウリナは唯息を吐くしかなかったのである。
 一分かそこらの時間、夜陰で潜んだ後にミルカが顔を上げた。

「そろそろ行きますか」
「そだな」
「・・・分かりました」

 三者は頷き合って、再び声の下に向かって歩いていく。俄かな緊張感を抱きながら歩いていくと、それらしき大き目の建物が見えてきた。その建物は隙の無い、即ち無骨な石造りの二階立ての建物であり、今は売りに出されているのか文と数字を刻んだ立て看板が門前に立て掛けられている。そして今ではその価値を完全な無に帰すかのような、血生臭い鉄が噛み合う高調子を鳴らしていた。セラムに顕現して以来大分聞き慣れて来た、剣戟が交わる蛮声であった。

「・・・剣呑な音ですね」
「どうしよう。俺武器持ってないや」
「憲兵の死体から奪えば良いのでは?」
「え。死んでる前提で行っちゃうんですか?」
「死んでも別にいいんですよ。あいつら、元盗賊ですから」
「それを憲兵として雇うって・・・しかも死んでもいいとか・・・はぁ、世の中怖いですね」
「え、ええ。本当、末恐ろしいですね・・・」

 パウリナの引き攣り気味な笑みを
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