第一部
第一章
現実から虚実へ
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押し付けてくるイブの前歯と唇の相反する二つの感触も、こうなっては俺の下半身で暴れる激しい性の奔流を織り成す、一つの要素でしかなかった。
「……んむぅ。」
え、ちょっとイブ……?なにして……。
上目づかいで、俺の目をじっと見据えるイブ。俺の膝の上で、髪を放射状に乱して、頬を朱に染める。じっと俺のことを見据えながら、咥えていた指から歯、唇をゆっくりと離したかと思いきや……。
「……ん。」
「い、イブ……」
再び指を挟む、上唇と下唇。馴染むように、張り付くように俺の指がイブの唇に吸い付いて……。
「ッ!?」
瞬間、指先に触れる感触が急に変わった。背筋を駆け上がる、ゾクゾクっとした刺激。快感とは、何かが違うような……よくわからない感覚。硬いイブの歯が挟んでいるわけではない、もっと違う……俺の鼓動の早さを、これまでにないほど限界まで高めさせるイブの行為。
……これ、待って。ちょっと、待って。
声が出ない。意識的にはイブを止めようと思ってはいても、俺の身体が言うことを聞かない。驚きと妙な気分。変態にでも成り下がったかのような気分、イブの容姿と行動とが俺の動きを制限する。
イブの……舌が舐る、俺の指先から全身へと伝播する痺れるようなビリビリとした感覚が、俺の精神をも麻痺させ、行動すらも抑制していた……。
「んむぅ……」
「ちょ、ちょっとイブ。待って……」
「……んぶ。」
時おり、イブの唇と俺の指との接合部から漏れる、卑猥で湿り気を帯びた粘着質な音が、俺の耳から神経を伝い、そして脳を蕩かす。俺の膝の上にその身を横たえ、その身全てを預けてくれているイブ。時おり俺の目を見つめ、そして時折目を閉じながら、俺の腕に軽く両手を添え、俺の指先から爪先までを上下に舐り、自分の唾液が絡みつけては、また自分の舌が絡め取り、舐り取っていく。少しざらついた感触と、舌の熱の伝った唾液の熱が、俺の熱をも上げる。
「あっ……」
情けない声が漏れ出でた。
くっ……こんなのって……。
心臓も下半身も恐ろしいほどに苦しく、息が早くなる。今までに感じたことのない刺激が、脳から神経全てを駆け巡り、暴れる。イブの顔から目を逸らせなかった……。
「ん……」
「イブ……?」
やがて、さっきまでは軽く添えるだけだった、俺の腕にかかるイブの力が少しだけ強まった。とは言っても、イブの力自体が弱々しい。そのはずなのにもかかわらず、今の俺はその弱々しくも、ある意味では強力なイブの力に抵抗できるだけの意志……というよりも、一種の理性のようなものは残っていなかった。
俺はイブから目を逸らさない。逸らせない。
イブはゆっくりと目蓋を閉じながら、小さな口をゆっくりと開いた。柔らかく吸い付くイブの唇と俺の指とが、その張力を断ち切るように離れ、外気に触れた指が涼しさにぴくっと揺れた。
「ん
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