一話「序章」
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え、そして縦に割った顎と不気味にこちらを睨むかのように見つめてくる紅い眼光を持つ「怪物」である。頭部はまるで、バッタを象ったかのような顔つき、そう……バッタ男だ。
「な、何者だ!?」
智代は、すぐさま敵意を感じ取り、ゆっくりと手を伸ばしてくる化け物目がけて彼女は鳩尾目がけて蹴りをくらわしたが、岩を蹴るような痛々しい感触が伝わって来、効果はない。引き続いて化け物の頭部への回し蹴りを試みるも、頭部さえも岩の如く頑丈で、これも効果はなかった。そして、怪物は伸ばしてきた鋭い爪と指を持つ五本指と手で彼女の首を握りしめて軽々と智代の体を持ち上げたのだ。
「ぐぅ……!?」
首に伝わる力は怪力のようで、今にでも骨が砕けてしまいそうだった。しかし、これ以上怪物が首を掴む手に力を銜える事はなかった。そして、
「……トモ…ヨ……」
何故か、怪物は彼女の名を弱まった口調で呟くと、彼女を手から解放して急に頭を抱え出し、苦しみだしたのだ。
「グゥ……?グオォー!!」
もがき苦しんだ怪物は、智代を目お前にして膝をつき、倒れてしまった。
「な、何が起きたんだ……?」
恐る恐る智代は怪物の元へ近寄るが、怪物の姿に異変が生じる。怪物の皮膚の色が急に変色して人間のような肌色の皮膚へ、ゴツゴツした皮膚の個所も柔らかみをつけていき、額の触角は水音を立てて縮んでゆく。そして、全ての変化を終えた時、智代の目の前に映ったものは……
「……と、朋也!?」
いや、違う。彼はもうこの世にはいない。目の前には智也に似た青年が怪物から姿を変えて横たわっていたのだ。
「……」
智代は、朋也の生き写しのように似るこの青年を、ただ見つめていた。
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