第11話 卒業
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ロしている金髪の孺子を殺すことが出来れば、ひとまず平和の前提条件は成立する。
あとは帝国領侵攻のようなアホな作戦案を握りつぶし、出来ればフェザーン回廊の出口にもイゼルローン規模の要塞を建築し、両回廊を結ぶ辺境航路を開拓することで、固定・機動両戦略防御が構築できれば、自由惑星同盟の「軍事的引きこもりの平和」が成立する。
そうなればグレゴリー叔父も戦死することはないし、帝国との休戦なり和平なりが成立して軍縮へと話が進めば、可愛い義妹達が戦場に出ることもない。俺はきっと黒髪の美女といい仲になって、世界中の農場からアーモンドを消滅させる運動に従事できるだろう。
そうなるためにも俺は軍人としてそれなりに出世の努力をしなくてはならない。そういうわけで最終考査まで俺はウィッティとかなり突き詰めて勉強したと思う。去年の“ウィレム坊や”のような突出した成績優良者は同期にはいないので、少しくらいは総合席次が上がっていると思いたい。
だが最終考査終了後の休日後、最終席次発表(つまり卒業式)の前日夜、シトレ校長より直々の映像通信を受けた時は、『また余計な事言うんじゃないのか、この親父は……』位にしか思っていなかったのだが……
「君はいい意味でも、悪い意味でも、私の期待に応えてくれない困った人物であることは、アントンの子供として産まれたときから承知している」
俺の部屋に設置されている通信画面の向こうで、シトレは歓喜の表情と言っていい顔つきで、変な言葉を続ける。同室戦友はシトレの顔を見た瞬間に、早々に二段ベッドの上に隠れ、こっそりとこちらを伺っている。
「性格がます軍人向きではないし、頑固という点では折り紙付きのボロディン家で育っている。いずれ聞き分けのない上官と衝突し、敵に対して余計な同情心を見せ、失った部下の為に心を消耗し、最終的には空想上の女性といい仲になって、病院の中で一生を終えるような気がしてならない」
黙って聞いていても、随分な言われようだと思うが、既に校長と一学生という立場であると宣告されたはずだ。
それなのに、この黒人の親父は親しげに長々と俺の悪口を言い続けている。
「つまり君が今日という日まで退学届を出さなかったというのは、私としても大いに不満であるし、同盟政府にとって大変な損失であると私は考えている。こうなってしまった以上、私としては貴官が、早期に退役して政界に転じて貰うことを節に祈るしかない」
「あまりにもひどい言いようじゃないですか、校長閣下」
「そうかね?」
「それと約束です。士官学校にいる間も、軍人である間も、校長と一学生の節度は守ると」
「今は友人達の息子にお祝いを述べているだけに過ぎないが」
「校長として卒業式での祝辞を述べられるだけで充分です。通信切りますよ」
「あぁ、
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