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【短編】竜門珠希は『普通』になれない【完結】
可愛いは正義。だけど化粧で作れる
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こに別腹があるのかわからない――結月と彩姫が食前に食べようと主張するが、珠希はそれを一蹴する。当然のごとく二人は口を尖らせたが、珠希はさらにピーマンのゴマ油炒めを持ち出して彩姫の口を封じた。

「うぅ……。大樹くぅん」
「よしよし。ちゃんとご飯食べれば問題ないから、ね?」

 とても夫婦の会話とは思えないものを目の当たりにし、次女は口を尖らせたまま自分の席に座り、珠希はご飯をよそいにキッチンへ向かった。そして珠希のすぐ近くで暁斗はデザートを手に冷蔵庫を開けたのだが――。

「ぅえ!? 何これっ?」

 暁斗の驚きの言葉に、全員の視線が冷蔵庫の前に立つ暁斗に向けられる。
 そこで珠希は思い出した。なぜ自分が帰宅後、母親の仕事場である離れに向かったのか。結局そこでレ○シーンを目撃してしまい、その後そのまま仕事ぶりを監視(・・)したためにすっかり頭から抜け落ちてしまっていたが、その原因となった物体はまだ冷蔵庫の中に入れたままだった。

「えー? なんで冷蔵庫にお○ぱいマウスパッド入ってんのー?」
「あ、お兄ちゃん。それたぶんお母さ――」
「おお、そういやすっかり忘れてたな」
「え゛っ?」

 たぶんお母さんが入れたのだと思う、と言いかけた珠希の口から漏れたのは苦虫を噛み潰した声だった。

「何これ、父さんが入れてたヤツなの?」
「そうそう。サンプルとしてもらったやつなんだが、今までとは違って冷却材みたいな成分があるから夏場でもベタつかずに使えるって聞いてな」
「えー? うわ、結構プルプルしてるし」
「マジで? おにーちゃん。私にも触らせて」
「お母さんにもー」

 え? あれ、冷却材って入れるの冷蔵庫じゃなくて冷凍庫じゃないの?
 最初にツッコむ箇所はそこではないということも忘れて唖然とする珠希をよそに、新素材らしいモノを使ってのおっぱ○マウスパッドは家族の興味を一手に集めていた。

「あ、あのぉ……」
「おおおぉぉ。これは確かにヒンヤリするぅ〜」
「確かに夏場でも使えるな、こいつは」
「ねえ、結月、お兄ちゃん……?」

「いいなぁ、これ。ねえ大樹くん。これ私にちょーだいっ」
「ああ。別に彩姫が使ってもいいぞ。サンプルでもらったものだし」
「ほんと〜? うわぁ、やっぱり大樹くん大好きっ♪」
「ちょっと、お父さん、お母さん……?」

 別に珠希としては褒めたりねぎらったりしてほしいわけでもない。それでもせめておっぱ○マウスパッドで盛り上がるのは晩ご飯の後にしてほしいのは本音だった。しかも食事をよそに新素材でできているというおっ○いマウスパッドに興味津々で盛り上がる家族を傍から見ているとどこかシュールなのだが、実際晩ご飯を作った珠希からすると面白くない。心底面白くない。このまま料理を下げてし
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