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【短編】竜門珠希は『普通』になれない【完結】
可愛いは正義。だけど化粧で作れる
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言われて喜ぶものだが、時にその言葉はいい年齢になった女性に対して嫌味か皮肉にしか聞こえないのだ。「ブサかわ」やら「キモかわ」という言葉が生まれる時点で「可愛い」のハードルはもうお世辞と同じ形式的な文句でしかない。
 そして珠希は今年の8月に18歳になる。一部の狭い世界での格言ではあるが、女は14超えたら下り坂だ。となればもう珠希はその下り坂を一直線にBBAに向かって転がり落ちていることになる。
 青い果実が熟れて実る瞬間は儚く呆気ないもので、旬を過ぎた果実は落ちて腐るだけ。そんなのはまっぴらごめんだと『普通』になりたい女子高生(JK)はできる限りの美容法をちまちまと試行錯誤している。

「あとお兄ちゃん」
「な、何かな珠希」

「あんなクサい台詞で声優口説けると思ってんじゃねーぞ声豚」

 話を元に戻すが――この声優に萌える兄はシチュエーションというものを何もわかっていない。どんなに心に刺さる台詞でも場所次第では馬鹿にしているのかと勘違いされることになりかねないというのに。
 何にせよ、晩ご飯がテーブルに広がるダイニングで兄が妹に言う台詞ではないのは確かだった。珠希が暁斗に返した言葉も同様に。

「……珠希。お前は今、一番俺に言っちゃいけない言葉を言ったな? 『声豚』と」
「ありのままの事実を認められない大人って嫌だよね」
「兄妹の情けでもう一度聞く。反省の色はないのか?」
「ない。というか反論できないなら豚舎(いえ)に帰れ」
「ここは俺の(ホーム)だ。実家(マイギルド)だ」
「豚舎が嫌なら窓に格子ついた病院に送り込むよ? そもそもここは酒場や集会所じゃないし、あたしはお兄ちゃんのギルメンでもない。第一、厨二病患者なんてあたしの家族にはいない」
「何だとぅ!?」

 すると、そこへ回収した彩姫を連れて大樹が姿を見せた。

「何だ何だ、珠希、暁斗。久しぶりに対面したと思ったら喧嘩か?」
「あっ、暁斗くん。今日は帰ってきたの?」
「そうだよー。久しぶりだね、母さん」

 暁斗の帰宅を言い忘れていた結月のおかげ(・・・)でサプライズじみた対面となった母と息子の会話もそこそこに、これ以上口論をするのも煩わしいと、珠希は全員分のご飯をよそおうと席を立った。

「あ、そうだ。このデザートどうすんだ? 冷蔵モノなんだけど」
「今食べよ! すぐ食べようっ!」
「そうね。結月ちゃんの言うとおり――」
「食べ終わるまで冷蔵庫」
「えーっ!?」
「そんなぁ。珠希ちゃん。少しくらいいいじゃない」
「そんなに肉抜きの青椒肉絲が食べたいの? お母さん」
「……(ふるふる)」

 暁斗がブランドスイーツ店のロゴが入った包装を掲げてみせると、相変わらず甘いものは別腹と――その細くて出るとこ出ている身体のど
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