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【短編】竜門珠希は『普通』になれない【完結】
可愛いは正義。だけど化粧で作れる
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間にか結月に背後から抱き締められる形になっていたが、珠希は兄と妹の言葉にメンタルをズタボロにされながらお茶を注いだ湯呑みをそれぞれの席に並べていく。

「でもさ、そういう二人は付き合ってる人とかいんの?」
「んー? 俺はいないよー。俺は付き合うんだったらみ○りんくらいじゃないと」
「私はカレシとか今は興味ないし。それに適当に付き合うくらいだったら最初からいないほうが楽じゃん?」
「……は? 何それ?」

 おいおい大概にしろよ、このダメ兄とバカ妹。あんたらも交際相手いないんじゃん。結月はともかく、このダメ兄は自分がみも○んと付き合えるとでも思ってるのか? ○もりんが可哀想だ。
 妄想するのは勝手だけど、堂々と本気でカミングアウトするのは社会人以前に人としてどうかと思う。このダメ兄も珠希や結月同様、両親からハイスペックな外見を受け継いでいるのだが、本当に中身が残念だ。
 それもそれで――なんであたしだけがメンタルブレイクされなきゃならんの?
 ご飯を前にそんなツッコミは心中だけに留めておき、ご飯をよそうのはお母さんが来てからにしようと珠希は一息つくことにする。

「あ、でもさー、最近出てきた『つばきん』いるじゃん? こないだ仕事一緒にしたけどあの娘はかなり可愛かったよー」
「えっ? マジでお兄ちゃんあの『つばきん』と仕事したの?」
「ねえ、その『つばきん』って誰?」
「え? おねーちゃん知らないの?」
寒咲(かんざき)椿(つばき)だよ。最近出てきた声優にいるじゃん」
「知らん」

 暁斗と結月の話が弾んできたのもあってか、『つばきん』の単語で脳内検索をかけてみたが、珠希のデータベースには一致する情報がなかった。案の定、本名――芸名というべきか?――を聞いたところでわからなかったので即座にざっくり切り捨てる。
 が、その実、後にも先にも自分の中で声優と呼べる人は一人しか浮かばなかった。

「はぁ。これだから珠希は何もわかってないんだよー」
「いや、わかりすぎてるお兄ちゃんに言われたくないよ」
「けどさ、おねーちゃんだって好きな声優が出てるアニメはチェックするじゃん?」
「まあそれくらいは……って、だからって興味ないアニメまで録画したりしないっての!」
「おいおい、それじゃあファン失格だぞー」
「あたしはストーリーで選んでるだけだってば! 声優基準で選んでないってだけで」

 あくまで珠希のアニメを見る基準は面白そうかどうかである。生憎と原作となった漫画やラノベとは縁が少ないので原作厨がネット上でなんと叫んでいようが自分が面白ければいいというスタンスである。ただし原作がergだった場合は別だ。
 しかしこの声優に出会うことができる仕事に就いている兄・暁斗も、これから高校受験を控えているという妹・結月
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