可愛いは正義。だけど化粧で作れる
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結月に頼んでテーブルの上に必要な食器を並べ終え、スープもいい感じの味になったところでご飯も炊きあがったところで、午後7時まで残り5分を切っていた。あとは人数分のご飯をよそい、お茶を淹れるだけだ。
別に時間と勝負していたわけではないが、間に合えばどことなく誇らしい感触を覚えるのはなぜだろうか。
「ただいま〜」
「ただいま」
これは久々に兄も揃っての食卓かと思っていると、玄関の戸が開く音と二人分の男性の声が聞こえた。先程も電話口で聞いた間延びした兄の声と、軽い感じを受ける父親の声だった。
「ねえねえ、おにーちゃんおにーちゃんっ!」
すると、久々の兄の声に惹かれるように結月が猛然と玄関へとダッシュしていく。
「おー、どうした結月ぃ」
「ただいま。結月」
「おにーちゃんっ、もしかしておねーちゃんのいうことに従ってないよね?」
「え? なにが? どゆこと?」
「何があったんだ?」
「お父さんにはわからないことだよ!」
「……え? えっ?」
状況がまったく呑み込めていない父を完全に視界の外に追いやった結月は、どうやら久々に会う兄の健康などより珠希が頼んだデザートの件を優先して尋ねているのだろう。ダイニングから玄関先での会話に聞き耳を立てながら珠希が急須に茶葉を注いでいると、そこへ溺愛する末っ子に追いやられてきた父が姿を見せた。
「ただいま。珠希」
「お帰りなさい」
「なあ珠希、結月にいったい何があったんだ?」
「あたしに聞かれてもわかんないな。デザートでお腹は膨れないってのに」
「んー?」
次女の発言から状況が理解できず、さらには長女の発言からも状況が呑み込めなかった父は小首を傾げると、ふとテーブルに目を向ける。
「お、今日は中華か」
「うん。見てのとおり」
「結構な量だな。いつもより多くないか?」
「お兄ちゃんがいるから」
「あー、それもそうだったな。兄がいるのか」
珠希が一から作った――ちゃんと肉は入れた――青椒肉絲や中華風スープをメインに、出来合いや冷食ではあるがエビチリや餃子がまだテーブルの上で湯気を立てて並んでいるのを見た珠希の父・大樹は、珠希の兄が久々にいることで、今日の晩ご飯の頭数が少なくなる可能性を憂えるような表情を浮かべた。
「でも大丈夫。お兄ちゃんにデザート頼んでおいた」
「おお、そうか。珠希は気が利くな……って、結月が何か騒いでたのはそれが原因か」
さすが亀の甲より年の功。実年齢50歳を過ぎてなお10歳は若く見えると近所でも噂のナイスガイを誇る大樹は、珠希の一言から結月がなぜあんなに騒いでいたのかをあっさりと見抜いてみせる。
「危うくお兄ちゃんの晩ご飯がなくなるところだったんだよ」
「それは
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