第七章
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「やっぱり」
「ずっとそうしたいって思ってたしな」
「西も東もな」
「悲願だったからな」
ドイツ人達のだ、長い間まさにそれだった。
「だからそれはな」
「いいことか」
「ああ、そのことは御前も否定出来ないだろ」
「統一は嬉しいさ」
彼にしてもだ、このことは紛れもない本音だ。
だが、だ。彼は東西の違い今その目で見ているそれを頭の中で比較しながら兄に対して遠い目で語るのだった。
「けれどな」
「言いたいことはわかるさ」
「そうか」
「俺もそう思うからな」
彼にしてもというのだ。
「御前と」
「そうか」
「これから色々とあるだろうな」
カールもまた遠い目で言った。
「本当にな」
「そうだろうな、統一してからな」
「ハッピーエンドだと思うがな」
「ハッピーエンドの後だな、問題は」
「そうなるな」
こうだ、久しぶりそれこそ何十数年ぶりに再会した兄弟は一つになろうとしている祖国の中で話すのだった。
そして実際にドイツは統一した、しかしそれは西が東を吸収するという形のものであり。
東西格差が問題になった、幾ら予算を注ぎ込んでもその格差は収まらない。インフラも何もかもが全く違う様になっていた。
このことがドイツの深刻な問題になっていた、それで彼等は苦しんでいた。そしてその一つになった祖国の中で。
カールとオスカーはまた会っていた、統一されてから二人は時々会える様になっていた、しかし二人共浮かない顔で話すばかりだった。
「フランクフルトでもな」
「不満ばかりか」
「ああ、どれだけ金を注ぎ込めばいいんだってな」
「東と西の格差のことをか」
「そうだ、税金が高いとかな」
「こっちもだよ」
オスカーも難しい顔でカールに述べる。
「西の奴等は偉そうだってな」
「自分達が上か」
「そう思ってるってな」
「そうだろうな、お互いな」
「辛いな」
「全くだよ」
統一はしたが、というのだ。
「それでもな」
「色々とな」
「ベルリンで見たけれどな」
「そのままだな」
あの西と東の違いがだ、統一してからさらに出たのだ。東西の格差はそこまで凄いものになっていたのである。
「どうなるんだろうな」
「暫くはな」
「金を注ぎ込んでか」
「格差の解消だな」
「そうなるか」
「それしかないだろうな」
こう弟に言う彼だった。
「結局のところは」
「そうか」
「頑張るしかないさ」
「それで何とかなればいいな」
「何時になるかわからないがな」
それでもと話してだ、そしてだった。
すっかり老人になってしまった二人は一つのドイツを見るのだった、確かにドイツは一つになった。しかし長い間二つだったことは深い溝になって残っていることを二人も多くのドイツ人達も思わざるを得な
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