第四章
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「兄貴から手紙が来た」
「フランクフルトからね」
「随分いいみたいだぞ」
「向こうも幸せなのね」
「ああ、こうして手紙を読むとな」
それで、というのだ。
「また兄貴と会いたくなるよ」
「けれどフランクフルトに行くのは」
「滅多なことじゃ出来ないからな」
渡航制限故にだ。
「ちょっとな」
「そうよね」
「けれどだよ」
「また、よね」
「兄貴に会いたいな」
「それでドイツも」
彼も妻も今も思っていた、このことを。
「何時かは」
「統一だな」
「本当にそうなって欲しいわね」
「全くだな、まあそれはな」
夢ではある、しかし夢だからだというのだ。
「そうはならないさ」
「到底なのね」
「ああ、夢は夢だ」
それに過ぎないとだ、オスカーは諦めていた。しかし時代は瞬く間に大きく動きそれによって。
何とあのベルリンの壁が崩れた、そして二度と開くことはないと言われていたブランデンブルグ門が開いた、後は最早流れのままだった。
ドイツは統一に向かった、東西ドイツでは人の行き来も普通になった。それでカールとオスカーもだった。
再会出来る様になった、それで実際にだった。
二人はベルリンで会うことになった、しかし。
お互いを見てだ、彼等は驚いて言い合った。
「おい、何だ」
「そちらこそ何だ」
二人共驚いた顔で言い合うのだった。
「その服は」
「全く違うじゃないか」
カールの服は綺麗なスーツだ、だが。
オスカーの服はスーツでもだ、かなりみすぼらしい。二人共そのことに気付いてそのうえでお互いに言うのだ。
「随分酷いスーツだな」
「そんないいスーツないぞ」
こう話すのだった。
「一体何年着ているんだ」
「いや、これでもな」
自分のスーツを見つつだ、オスカーは兄に答えた。
「一張羅なんだよ」
「それでか」
「ああ、とっておきの服だよ」
このスーツが、というのだ。
「俺の持っている服の中でな」
「そうなのか」
「それで兄貴」
今度はオスカーからカールに言った。
「その見事な服はな」
「これが普通だよ」
「普通!?」
「ああ、西じゃな」
それこそだというのだ。
「誰でも着ているな」
「普通の服なのか」
「ああ、そうだよ」
まさにその通りだというのだ。
「これ位はな」
「信じられないな、それに」
オスカーは周りを見た、今二人は西ベルリンの中にいる。その西側を見つつだ、彼はカールにこうも言ったのだ。
「ここは何だ!?」
「西ベルリンがか」
「皆兄貴みたいないい服着てとんでもない車に乗ってて」
こう唖然としつつ言うのだ。
「ガム噛んだりしていてあの店の菓子な」
「ああ、あの喫茶店な」
オスカーは彼等の傍にある喫茶店を見て
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