第二章
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負傷はした、だがそれでもだったのだ。
「何とか生き残ったな」
「幸いな」
このことも喜び合うのだった。
だが状況はドイツにとってこれ以上はないまでに最悪だ、それでカールは暗い顔でオスカーに対して言った。
「そっちはどうなんだ?」
「俺の方か」
「ドレスデンも相当なものだろ」
「爆撃も酷かったからな」
ドレスデンへの連合軍の爆撃は特に酷かった、空を埋め尽くさんばかりの爆撃機が昼も夜も来て爆癖を行ってきた。
その結果だ、ドレスデンはどうなったかというと。
「このベルリンより酷いかもな」
「それじゃあフランクフルトよりも酷いな」
「ああ、洒落になってないさ」
そこまで酷いというのだ。
「どうなるかっていう状況だよ」
「こっち戻って来るか?」
カールはここで弟に提案した。
「フランクフルトに」
「そうしてか」
「ああ、こっちでまた暮らさないか」
「いや、かみさんがな」
あの付き合っていて今は妻となっている彼女がというのだ。
「それはっていうからな」
「だからか」
「ああ、俺は残るよ」
「ドレスデンにか」
「そうして生きていくよ」
「そうか、じゃあな」
「また手紙書くな」
正直今の状況では連絡がつくことも奇跡だ、こうして二人で生きて会えたことも。二人はその幸運に神に感謝していた。
その感謝のうちにこう話してだ、二人はそれぞれの住む街に戻った。だがそれから数年の間二人は敗戦の混乱の中で家族と共に生きていくだけで必死だった、そしてその中で。
ドイツは東西に分かれることとなった、カールは何とか持てた自宅の中でその東の方を忌々しげに見ながら妻に対して言った。
「もう一つじゃないんだな」
「そうね、ドイツは」
「フランクフルトは西でか」
そして、と言うのだった。
「ドレスデンは東か」
「あなたの弟さんはそこにおられるのよね」
「ああ、ドイツ民主共和国か」
それに対して西はドイツ連邦共和国という、まさに別々の国だ。
「あそこにいるさ」
「そうなのね」
「生きていてもな」
自分も弟も、と言うカールだった。
「これじゃあな」
「会えないわね」
「ああ、もうな」
カールは妻に無念の顔で答えた、だが。
それでもだった、妻にこうも言った。
「けれどな」
「けれど?」
「俺達が生きている間は無理でも」
正直絶望的だと思っていた、だがそれでもだというのだ。
「何時かドイツはまたな」
「一つになるのね」
「ああ、統一しないとな」
「駄目よね、確かに」
「こんな、二つに別れた状況なんてな」
とてもだとだ、彼は妻に忌々しげに話すのだった。
「絶対に駄目だ」
「ドイツは一つでドイツね」
「今は絶対に無理だけれどな」
「また何時かなのね」
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