第一章
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統一されたが
カール=ブラウガルトとオスカー=ブラウガルトは兄弟である。
カールの方が一つ上だ、幼い頃は共にフランクフルトに住んでいた。
だが仕事に就いてからだ、オスカーはカールに対して言った。
「俺はドレスデンに行くよ」
「あの街にか」
「ああ、今付き合ってる娘がいるんだけえrどな」
「その娘がか」
「元々あそこの生まれでな」
それでだというのだ。
「あそこに帰るって言ってるんだ」
「そうなのか」
「それで俺もな」
彼もだというのだ、オスカーもまた。
「一緒にドレスデンに行ってな」
「そこで結婚してか」
「あの街で二人で生きるよ」
そうするというのだ。
「そう考えているんだよ」
「そうか、俺はここに残るがな」
カールは弟にフランクフルトに残ると告げた。
「御前は向こうで所帯持つか」
「そうするよ」
「わかった、じゃあ向こうでも元気でやれよ」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「向こうでも幸せにやれよ」
そのドレスデンでもだというのだ。
「いいな」
「兄貴ももうすぐだよな」
「ああ、俺も付き合ってる娘がいるからな」
「だからだよな」
「こっちの娘だからな」
フランクフルトの、というのだ。
「ここに残るさ」
「そうするんだな、まあやっとドイツもな」
彼等がいるこの国も、と言うオスカーだった。
「よくなってきたな」
「今までが酷過ぎたんだよ」
カールは顔を顰めさせて弟に返した。
「幾ら何でもな」
「インフレに失業にか」
「ポンドなんて紙屑だったからな」
第一次大戦の敗戦と天文学的な賠償金、それに世界恐慌の影響でだ。ドイツ経済は完全に崩壊していたのだ。
だがナチスが政権に就いてだ、ドイツもだったのだ。
「それがよくなってきたからな」
「やっとな」
「だからだな」
「ああ、俺もドレスデンで働くよ」
オスカーは微笑みカールに返した。
「時々手紙も書くからな」
「送って来いよ」
「そうするな」
弟は笑顔のまま兄に答えた、彼はドレスデンに行きそこで夫婦で生活をすることになった。オリンピック直前のことだ。
時代は揺れ動きドイツは戦争をはじめた、欧州全体を巻き込んだ途方もないそれこそ先の戦争なぞ比べものにならないまでの戦争だった。
その戦争にドイツは敗れた、その結果だった。
ドイツは東西で分割されることになった、その直前だった。
戦後の混乱の中で何とかだ、カールとオスカーは出会うことが出来た。ドイツに駐留する連合軍の厳しい検閲を何とかかいくぐってだ。
二人は手紙で連絡を取り合ったうえでベルリンで再会した、ベルリンは完全な廃墟花礫の山になっていた。
だがその花礫の山と山の間を歩きながらだ、二
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