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切らなかったカード
第一章
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赤にさせてだ、こう彼に言ったのである。
「御前は黙っとれ!」
「えっ!?」
「黙っとれ言うたんや!」
 有無を言わさない口調だった、こうしてだった。 
 鶴岡は杉浦を登板させなかった、そしてこの試合はピンチで打たれて南海が負けた。杉浦はベンチで試合を見てこう思った。
「わしが投げてたらな」
 こう思うことしきりだった。
「抑えられた。勝ってたのにな」
 当時のエースは連投もリリーフも常だった、だから杉浦もそれが常識として鶴岡に申し出たのだ。だがだった。
 鶴岡はそれを退けた、それで負けた。杉浦にはわからなかった。
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