三十六 波紋
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傍へと近寄る。
「お疲れ様」
姿無きソレを労わるように、ナルトが微笑を浮かべた。その優しき声音に誘われたのか、ソレは姿を現す。
夕焼けを浴び、くるると喉を鳴らす巨大なカメレオン。
透明化し、砂中に身を潜め、我愛羅の背後に回り込んでいた。その正体であるカメレオンは我愛羅の首筋に押し付けていた鋭い舌をくるりと丸め、ナルトの身体に擦り寄る。
自身の何倍もの大きさの口寄せ動物。その顎を優しく撫でてから、ナルトは「それじゃあ彼によろしくね」と印を結ぶ。
ぽんっと立ち上った白い煙を見つめる彼の背中へ、石柱陰で隠れていた香燐が声を掛けた。
「すげえな。さっきの口寄せ動物…。何処で見つけたんだよ?」
「借りていただけだよ」
ナルトの言葉に、ふぅんと気の無い返事をする。彼の肩越しに広がる光景に、香燐は目をやった。
激しい砂嵐が通り過ぎたかのような有様。今の今までいた我愛羅の中に潜むチャクラを思い出し、香燐はぶるりと身震いした。
「…あの我愛羅って奴、ヤバいぜ。我愛羅自身もヤバいけど、その奥にいるヤツはもっとヤバい」
顔を歪ませる。どこか怯えを含む彼女の声に、ナルトは振り返った。事前に頼んでおいた事柄を訊ねる。
「我愛羅のチャクラ、憶えてくれた?」
「あ、ああ。一応特定したけど…」
香燐の発言に満足し、ナルトは空を仰いだ。頭上で円を描く禿鷹を視線で追う。訝しげな表情を浮かべる香燐の隣で、彼は口元に微笑を湛えた。
我愛羅の存在を主張するように未だ畝を成す波紋。
太陽はとうに沈み、砂漠は虚ろな闇に呑み込まれつつあった。
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