三十六 波紋
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愛羅が怒鳴る。
自分が憎むべき父――風影の器に、化け物がなれるものか。そんな事、冗談でも言ってはいけない。
物凄い形相で、見る者全てが竦み上がるほどの殺気を放つ我愛羅。それをナルトは悠然と受け止めた。
「わかるよ」
微笑む。
「君の目はかつての俺と同じだからね」
一瞬言葉を失う。
息を呑み、立ち尽くした我愛羅の首筋に何か鋭いモノが押し付けられた。
感触からしてクナイだろうか。何か鋭利なモノで自身を狙うその存在に、我愛羅は愕然とした。
チャクラも気配さえも感じない。何より絶対防御を誇るこの自分が背後をとられた事実に、彼は動転した。
振り向こうとするが、ナルトの声が我愛羅の動きを妨げる。
「さて。そろそろお開きにしようか」
自身の首に押し付けられた鋭いモノが力を入れる。途端、チクリとした小さな痛みが我愛羅の全身を駆け巡った。
眼前の光景が揺らめく。とても立っていられなくなり、我愛羅はガクリと膝をついた。それでも力を振り絞り、負けじと叫ぶ。
「貴様を殺して、俺の強さを証明してやる!!」
「うちはサスケと試合し、波風ナルと勝負して…。それでも殺し合いたいのなら君の挑戦を受けるよ、我愛羅」
朦朧とする視界の中で、ナルトの穏やかな顔が見えた。
「だけど憶えておいて。もしナルやサスケを殺した後で俺の前に来たのなら……」
次に告げられた彼の一言に、我愛羅はある感情を抱く。初めて体験し、感じたそれは我愛羅自身認めたくないモノだった。
「その時は覚悟しておいたほうがいい」
それは紛れも無く、恐怖であった。
そこで我愛羅の意識はぷつりと途絶える。正気に返った時、彼の瞳に映ったのは血を分けた姉兄だった。
今まで何処にいたのかと問い詰める彼らの声を聞き流し、我愛羅は周囲を見渡した。どうやって辿り着けたのか、何時の間にか宿に帰っていた自分に戸惑う。
しばらく考えに耽っていた我愛羅の脳裏に、深き青が鮮やかに浮かび上がった。
(確かに俺と同じ…いいやそれ以上に、)
意識を失う寸前、我愛羅を射抜いた双眸。強さを湛えた青は太陽の如くじりじりと我愛羅の脳裏に焼き付いた。
本人同様強い印象を与えたナルトの目は―――――。
(孤独を知っている目だった…)
我愛羅の攻撃により、先ほど以上に殺風景な砂漠。
毒々しい炎を立ち上らせた太陽が地平線に没し始める。見渡す限り草木の一本すら生えていない砂地。
突如、その一部が蠢いた。
どろりとした赤き残光を受けながら、ザザザと砂海を泳いだソレはナルトの
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