三十六 波紋
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は呆然と見送った。
今まで彼には敵がいなかった。全てをねじ伏せ、圧倒し、そしてその命を刈り取った。
己の力の前では誰ひとりとして抗えない。だから周囲の人間は自身を怖れ、憎み、命乞いさえした。
化け物と罵られ、実の父親にも危険物と見做される。異物扱いなど日常茶飯事。
ならばもう人ではないのだろう。人の道理に外れても何等支障は無い。
なぜなら俺は化け物なのだから。
力を求める。己を孤独という地獄に追い込んだ者を殺す為に。
より強い者と殺し合う。自身の存在価値を確かめる為に。
そう結論を下す事で生き永らえてきた我愛羅は、中忍試験を受けるに当たって、強い存在を探し求めた。
まず目をつけたのは、うちはサスケ。次に自身を馬鹿にした君麻呂。
そして最後に、君麻呂が強者と称し、従っている――――うずまきナルトに強い関心を抱いた。
最初は本当に強いのか半信半疑だった。だが圧倒的な力量差でリーを打ち負かしたナルトの試合を観て、それは確信へ変わった。
うずまきナルトこそが己の獲物だと。
闘いたい。いや殺し合いたい。そして己の存在価値を認識したい。
ナルトを殺す事で、その全てを消し去った存在として、『生』を実感したい。
だがなぜかナルトは「同じ里だから」という単純な理由で、あっさり試験失格となった。
同じ里の者に幾度となく暗殺され掛けた我愛羅には理解出来ない。そしてまたナルトと闘う機会を、諦められるはずも無かった。
だから宿を脱け出し、毎日のように里中を捜した。なかなか見つけられなかったが、今回木ノ葉病院から出て来たところを偶然見掛け、跡をつけたのだ。
このチャンスを逃してなるものか、と意気込んで戦闘を仕掛ける。都合の良い事に地の利はこちらにある。負ける気はしなかった。
だというのに、この状況は何だ。どうして砂は怯えるように瓢箪へ戻ったのだ。
そしてうずまきナルトは、なぜ己を前にして、余裕でいられる。
全てが初めての経験ばかりで我愛羅は内心戸惑っていた。
静寂が訪れる。ややあって我愛羅はナルトをギロリと睨んだ。怒りで肩を震わす。
「…なぜ何もしない!?」
「俺は闘うつもりなんて毛頭無いよ、我愛羅」
再度降りる沈黙。その静寂を禿鷹の羽音が打ち消した。灰白色の羽根が抜け落ち、二人の間へゆっくりと降りてくる。やがて静かにナルトが口を開いた。
「君は力を求め、憎しみと殺意に満ち溢れている。本当の孤独を知り、それがこの世の最大の苦しみだと知っている…」
「……!!」
「だけど君は影に生きるべきではない。影を背負う器だ」
「…全てを見透かすような言い方は止めろ!お前に何がわかる…ッ!知ったような口を利くなっ!!」
珍しく取り乱した我
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