三十六 波紋
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いる?殺した数が己の強さであり、生きる存在だ。そして今俺を満足させられるのはお前だ。うずまきナルト」
依然として己との殺し合いを強要する我愛羅に、ナルトは嘆息した。
「強さを決めるのは圧倒的な力じゃない。いくら君が強くても、波風ナルには勝てない」
「怖気づいたのか」
頑なに戦闘を拒む彼を挑発する。だがナルトは静かに笑みを浮かべただけだった。それが我愛羅の癇に触る。
(波風ナルを引き合いに出して俺との闘いを避けるつもりか…ッ)
組んでいた腕を解き、口角を吊り上げる。両手を広げ、我愛羅はぐいっと顔を突き出した。
彼の想いを酌み取ったのか、小刻みに動き始める足下の砂。同時に瓢箪の中身が蠢き出す。
「さぁ、感じさせてくれ……」
瞬間、殺気と砂がその場にドバリと溢れた。
周囲の石を蹴散らす。岩を砕き、柱石を抉ってゆく攻撃性を持った砂。
自身目掛けて押し寄せる砂の奔流を、ナルトは何ともなしに眺めていた。特に何もせず、瞳を瞬かせる。
刹那、砂がぱあんと弾け飛んだ。
音を立て地に墜ちる己の得物に目を見張る我愛羅。だが即座に彼は両腕を前方へ振り上げる。
腕の動きに従って、天高く舞い上がる砂。瓢箪の中身だけでなく荒野に散らばる砂をも掻き集め、上昇させる。岩石や低木しか無いこの砂漠は我愛羅にとって最も有利な場所だ。
猛烈な勢いで巻き上がった砂が雲を太陽さえも覆い尽くす。空一面の渦巻く砂海。
膨大な量の砂粒はまるで太陽の血潮のようだ。上空からナルト目掛けて一気に降り注ぐ。観戦していた禿鷹が慌てて空へ避難した。
天から地に叩きつけられる海。轟音を伴った砂の洪水が我愛羅にまで押し寄せる。
大きく広がる砂塵の波。濁流は周辺の低木までもを呑み込んでゆく。大小の岩石が押し流され、石柱が削られる。広大な砂地に果てしなく形作られる波紋。
やがて晴れゆく砂煙の中、我愛羅の目が大きく見開かれる。
砂海の中心にてナルトが平然と立っていた。
砂嵐でも起こったのかと思えるほど、辺りは散々たるものだった。
特に惨たらしい様を見せるのは、砂が墜落した地点。足下の畝状の隆起が如何に激しかったかを物語っていた。しかしながら周囲が凄まじい衝撃を受けている反面、そのちょうど中央だけがまるで台風の目の如くぽっかり空いている。惨状の中、傷一つ無い状態で佇む彼の姿は異様であった。
ふっとこちらに向けられた青の双眸に、我愛羅の身体が無意識に強張った。同時に周辺の砂がナルトを避けるように円を描き、空へ再び舞い上がる。
己の総身の意思に反して瓢箪の中へ戻って来たそれらを、我愛羅
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