第五章
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「是非」
「わかりました、それでは」
「はい、では」
主も頷いて答えてだった、そのうえで。
刀のところに歩み寄りだ、その鞘と柄にそれぞれ手をやって。
そのうえでだた、ゆっくりとだった。
刀身を抜いた、その白銀の刀身は決して強い輝きではなかった。
だが美しく見事な輝きでだ、リチャード達の前にその姿を現した。
見事なカーブを描き波の如き刃の模様が刀身にある。柄や鍔も入れたうえでの見事なとその刀身を見てだった。
そのうえでだ、こう言ったのだった。
「これ程までとは」
「思っておられませんでしたか」
「はい」
そこまでの美しさだというのだ。
「これまで見た中で最高の刀です」
「そう思われますか」
「はい」
「では幾らで買われますか」
主は刀身を鞘の中に戻してからだ、あらためてリチャードに問うた。
「この刀を」
「買うつもりでした」
自然とだ、リチャードはこの言葉を出したのだった。
「これまでは」
「しかしですか」
「あまりにも見事です」
それ故にというのだ。
「この刀は至高の刀、ですから」
「買われませんか」
「私なぞ、そして当家は持つには」
到底というのだ。
「勿体ないです」
「それでなのですか」
「買いません」
これが彼の判断だった。
「この刀は貴方がお持ちになって下さい」
「このまま私が預かっていていいのですね」
「その武将の家の方、ご主君の家の方は」
「何と仰っていたかですね」
「はい、何とでしょうか」
「長い間持っていたので」
それで、というのだ。
「私にと言ってくれています」
「それではです」
リチャードは主に目を向けてあらためて言った。
「この刀は貴方が」
「では」
主も頷きだ、そうしてだった。
紅雪はそのまま主が預かることとなった、やがてこの刀は主が主家筋の人と話してそのうえでなのだった。
国に渡し国宝となった、父はその話を聞いて息子が帰って来た時に問うた。
「買わなかったのだな」
「はい」
「あまりにも見事だったからか」
「これはと思いまして」
こう答えるリチャードだった。
「あまりにも見事だったので」
「当家が持つにはか」
「確かに我が家も古い家です、しかし」
「その刀はか」
「当家ですら持つには過ぎるものと思いました」
その目で見てだ。
「ですから」
「買わなかったのだな」
「そうしました」
「刀は日本の国宝になったのだな」
「そうです」
「それだけのものか」
父は唸る様にして言った。
「日本そのものが預かるに相応しいだけの」
「日本刀はどの国のものか」
「日本のものだ」
このことは言うまでもなかった、その名が示す様に。
「我々はただ買い愛でるだけだ」
「
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