第三章
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「新選組の近藤勇が持っていましたが」
「あれはだな」
「はい、実は贋作だったとのことです」
「しかし近藤勇はその刀を愛していました」
「本物だとして」
「そうでしたね、日本刀が素晴らしい理由として心があります」
このこともだ、トーマスは言うのだった。
「持ち主の心が映し出され宿ります」
「他の刀剣よりもな」
「そこが違います、ですから」
「集めるにしてもだな」
「持ち主の心を見ましょう」
「その通りだな」
こう話してだった、そのうえで。
リチャードはトーマスの助けも借りつつ銘品を探していた、そうして何振りか見付けて買った。そしてある時だった。
トーマスはある銘品の話を聞いてだ、リチャードに話した。
「凄い刀があります」
「どんな刀だ」
「日本の戦国時代に作られ」
そして、というのだ。
「数多くの戦の中で活躍したものとのことです」
「戦国時代のか」
「何でも名のある武将が持っていたとか」
「その刀の名は」
「紅雪です」
この名前だというのだ。
「紅雪というそうです」
「紅雪か」
リチャードはその刀の名を聞いてまずはその名を実際に自分の口で呟いた。
「面白い名だな」
「これまで幻の刀と言われていました」
このこともだ、トーマスはリチャードに話した。
「銘品中の銘品、それこそ正宗や村正の様な」
「正宗や村正のクラスか」
「そう言われてきた刀です」
「正宗は国宝だ」
日本刀において最高の位にあるとされている、リチャードもこのことは刀について学んだうえで知っている。
「そして村正はな」
「妖刀と言われていますが」
「実際は妖刀ではないな」
「その様です」
このことを言うのだった、リチャードに対して。
「実際のところは」
「そうだったな、徳川家に因縁があるだけで」
「代々の当主、跡継ぎが殺められ傷付けられてはきました」
「しかしだな」
「その他には祟る等の逸話もありませんし」
「持っていても何もありません」
こうリチャードに話すのだった。
「村正は」
「あの刀は手に入れたいがな」
「もうないかも知れませんね」
村正で世に埋もれているものはだ。
「やはり」
「そういうものか、しかし」
「それでもですね」
「その紅雪は手に入れたいな」
「そうされますか」
「別に妖刀ではないな」
リチャードは妖刀、祟り人に禍を為す刀の存在を否定していなかった。そうした刀は実際にあると考えていた。
だがここでだ、こうも言ったのだった。
「あの刀は」
「はい、その様です」
「ではだ」
「御覧になられますか」
「そして買うかどうかな」
「決めますか」
「おそらく買う」
確かな声でだ、リチャードはトーマスに言った。
「その紅雪をな」
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