第十三章 聖国の世界扉
第四話 入国
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いる等といったとんでもない話ではなく、ただ単純に敵が背中を向けたまま近づいて来ているだけであると。だが、その速度がとんでもない。その動きがあまりにも速く、一瞬で目の前に現れるため、大きくなったように見えたのだ。
しかし、そんな事が分かったとして、もうどうしようもない。
奇妙に穏やかな気持ちで、男は迫り来る赤い背中を見つめる。
粘度を増した世界、動けずにいる男の視界に最後に映ったのは、真っ赤な敵の背中だった。
「―――テツザンコウ」
「え? なに、それ?」
士郎が残りの四人の聖堂騎士をまとめて背中からの体当たりで吹き飛ばすと、キュルケの隣にいたギーシュがぼそりと言葉を漏らした。聞きつけたキュルケがその意味を問うと、ギーシュはチラリとキュルケを見上げると、自分の知るかぎりの事を口にした。
「ハッキョクケンの技の一つだよ。ま、簡単に言えば、肩や背中を使った体当たりだね」
「へぇ、体当たりねぇ……四人まとめて吹き飛ばすなんて、魔法……というわけではないのよね」
「……その筈だと思う。僕らが使っても、まあ、普通の体当たりよりマシって感じなんだけど、隊長が使ったら“エア・シールド”を使ったとしても吹き飛ばされてしまうし……ほんとあの人無茶苦茶だよ」
ギーシュが『はは……』と引きつった笑い声を上げていると、残心を終えた士郎が戻って来た。
「シロウ、怪我はありませんか?」
「セイバー。流石にあの程度の輩に怪我を負う程なまってはいないぞ」
「分かっています。ただ確認しただけです」
士郎とセイバーが軽口を叩くのを、ルイズたちは何処か呆気に取られたような顔で見つめていた。それもそうだろう。いくら士郎が強いとは知ってはいても、ハルケギニアでも恐れられる聖堂騎士たちを、十秒も満たない時間で―――文字通り秒殺してしまったのだ。しかも、剣を使わず素手でだ。しかも士郎は涼しい顔をしており、まだまだ余裕があることを伺わせている。
「だけどこれからどうするつもり? 聖堂騎士がこれで全員なんて事はないわよ。直ぐに応援が駆けつけるだろうし、それともここでロマリアの騎士を全員相手にするつもり?」
進み出たキュルケが士郎の前に立ちこれからについて質問すると、士郎は応えずチラリと空き地を取り囲む廃墟の一つに視線を向けた。
「シロウ?」
「まあ心配するな。後始末してくれそうな奴の検討はついている」
「え? それって―――」
「そこにいるのは分かっているっ! さっさと降りてこいっ!!」
『誰のこと?』と続く筈だった言葉は、士郎が唐突に上げた声に遮られてしまった。
「シロウ? 誰かいるの?」
「ああ」
士郎が視線を向ける廃墟に顔を向けながら、ルイズが不安気な声を上げる。士郎はそれ
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