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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第四話 入国
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なった感情のまま、士郎に指を突きつけ怒鳴り声を上げた。避けたのは失敗だったかと反省した士郎だったが、流石にこれに付いていけば禄なことにならないのは確実である。何とか穏便に話をつけようと、僅かに残った忍耐やら理性やらを掻き集めていると。

「―――へ、祈り屋風情がナマ言いやがって」
「だ、誰だっ!」
「っ、お、おいデルフ」

 突然士郎の腰の辺りから不機嫌そうな声が上がった。いきなりの物言いに、誰が口にしたと怒りに染まった目で辺りを見回した衛士は、それが士郎の腰に佩かれている剣から聞こえてきたことに気付くと、苦々しく口元を歪めた。

「インテリジェンスソード如きが神聖なるロマリアの騎士を侮辱するとはっ! 何と罰当たりなっ!! この鉄屑がっ! 炉に放り込んで煮溶かしてくれるわッ!!」

 湯気でも出そうな勢いでデルフリンガーに向かって掴みかかってくる衛士の手を、ガチャガチャと暴れるデルフリンガーの柄を両手で押さえ込みながら、士郎はまたもヒラリと華麗に躱す。勢い余って地面にダイブする衛士の男。咄嗟に手を貸そうとするも、士郎の手は、暴れるデルフリンガーを抑えるのに手一杯で貸す手などありはしなかった。最近鞘から抜くどころか話すらしていなかったため、極度にストレスが溜まっていたのだろう。いっそ見事というほどの暴れっぷりである。士郎がデルフリンガーを何とか鞘に収めようと苦労している端で、頭から被った砂をぱらぱらとこぼしながら立ちあがった衛士の男が、鼻息荒く士郎に向けて襲いかからんと身構えた。何時襲いかかっても可笑しくない程興奮状態に陥った衛士を、鞘から抜け出る勢いで暴れながらデルフリンガーは、それでもなお挑発を繰り返す。

「ハッハ―――っ! やれるもんならやってみなこの祈り屋がっ! 金勘定ばかりでガリガリのお前らに、オイラを持ち上げられる事が出来ればの話だけどなぁっ!!」
「きっ、きき、貴様ああああぁぁぁぁぁッ!!」
「ちょ、ちょっと待て。いやさ待ってください」

 もはや人ではなく獣の様体で飛びかかろうとする衛士の前に両手を突き出して止めた士郎は、焦った調子で腰のデルフリンガーに汗だくな顔を向けた。

「何を言っているんだデルフ。少し落ち着け。ここで揉め事を起こして何になるって言うんだ。冷静になれっ!」
「ぅ、で、でもよう相棒。仕方ねえんだよ。おりゃこのロマリアって国がでぇきれえなんだよ。何よりこの国をつくったフォルサテって男がもうとんでもなくいけすかねえ男でな」
「だからって今文句を言う理由はないだろっ! そりゃ気持ちは分かるぞ。人の心の傷を抉り出しては悦に浸る人格破綻神父やら、他人の幸福を潰すのが趣味であると公言して憚らない毒舌シスターやら、カレー狂でキレたら手がつけられないシスターやらと教会関係者には禄な奴がいないって事ぐ
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