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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第四話 入国
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何も起きなかったことと同じである。隠密な行動は失敗したが、トラブルの可能性は出来るだけ最小限な方がいい。

「まあそういうことだ。で、だ。どうしてお前がここにいる? ロマリアの神官だとは聞いていたが……まさか今ここにいるのは偶然だと言うつもりはないだろな」
「はは、流石に偶然とは言いませんよ。あなた方が今日こちらに到着することは事前に分かっていましたので、聖下の命令に従い迎えに来たんです」
「迎えに、か……。ああ、そう言えばそこに転がっている聖堂騎士たちは“とある事件”を追っていると言っていたが何か知っているか?」

 にこやかに笑うジュリオを細めた目で見返した士郎は、チラリと空き地の端に転がる聖堂騎士に視線を向けた。

「ええ良く知っていますよ。何しろ彼らが追っている事件の切っ掛けとなる噂を広めたのはぼくですから」
「……彼らの殺気立ち様から見て、随分と物騒な噂を広めたようだが」
「まあ、確かにそうですね。なにせ聖下がさらわれたというものですから。ああ、安心してください。広めた噂は全くの嘘ですので」
「何故そんな嘘をついた」

 士郎の目に剣呑な光が宿る。『ははは』と黄金にも負けないだろう金の輝きを見せる後ろ髪を掻きながら、ジュリオは士郎たち一行を見渡した。

「これからあなた達が達成しなければならない任務はかなり危険なものですからね。なのでテストも兼ねてあなたたちの強さを見せてもらおうと思ったんですよ。聖下が拐かされたと言う噂が流れれば、真っ先に狙われるのはあなたたちだろう事は予想できていましたので。あなたたちがあの特異な船で来ることは予想出来ていましたからね。ですが、あなたがた全員の力を見せてもらうつもりでしたが、まさかシロウさんだけで聖堂騎士たちを倒すとは思いもしませんでしたよ。しかも剣を使うどころか素手で聖堂騎士たち全員をのしてしまうなんて……」
「な、何を考えているんだお前はっ! 下手したら死んでたかもしれないんだぞっ!?」
「この程度で死んだらその程度の男だったと言うだけだろ」

 ジュリオの語った衝撃の事実に、ギーシュたちが非難の声を上げる。しかし、ジュリオは涼しい顔のまま肩を竦めて見せた。あまりの物言いに、ギーシュたちが顔を真っ赤にしながらジュリオに掴みかかろうとするが、その前に遮るように士郎が立った。

「―――チッタディラから付いてきている奴がいるとは思っていたが……神官とやらは随分と暇なようだな」
「やはり気付いていましたか……流石と言うところですね。あなたならばもしかすると、一人でも任務を遂行できるかもしれませんね」

 軽口を叩くような口調で言いながらも、全く笑っていない目で士郎を見つめるジュリオ。 

「先程から任務と口にしているが、何のことだ?」

 警戒が多分に滲んだ士
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