ターン14 鉄砲水と負の遺産
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けど、なんだか今の言葉を聞いて視界がぼやけてきた。慌てて、チャクチャルさんに気づかれる前に涙をぬぐう。ああ、そうだ。ユーノたちは光の結社に入った。十代は行方不明。なぜか夢想も最近見かけなくなった。みんなみんな僕の前からいなくなっちゃったけど、それでもまだ僕は一人じゃなかったんだ。なにせ、こんなに心強い味方がすぐそば、具体的にはデッキの中にいたんだから。
『まあ、なんだ。別に私だけがそう感じているわけではない。霧の王をはじめとして、マスターのデッキの全員は1度たりとも愛想を尽かしたことなどない。マスターが耳をふさいで、私たちの声を聞かないようにしていただけだ』
その補足がまた、僕に響く。みんな、ありがとう。胸の奥でそう呟くと、なんだか力が湧いてくる気がした。
だが、それが先代にとっては気に食わないらしい。
「けっ、しばらく見ないうちに、随分つまんねえこと言う奴になったもんだねえ。ご立派な友情は結構だがね、旦那。アンタはもう詰んでるってことをいい加減思いだしなよ。当然、旦那が負けたら生かして返す気なんて俺にはないからね?」
「あう。ちゃ、チャクチャルさ〜ん」
『そこでなぜ私を見る、マスター。よく考えてみてほしいが、ここで私をドローしたとしてもそれはどう考えても手札事故だ』
あ、自分でそれ言っちゃうんだ。いやまあ確かにそうなんだけど。この局面では絶対引きたくないカードではあるけれど。
「じゃ、じゃあ………」
「思い出してくれ、私が初めてマスターの前に現れた日のことを。あの時のように、もう一度』
「もう一度?」
初めてチャクチャルさんにあった日というと、あのカミューラとデュエルした日のことだろう。あの時は確か、本気で願ったんだ。デュエルの神様お願いします、何か逆転の一手を授けてくださいって。闇のゲームによる痛みで死にかかってて、とても本気だった。そうしたら本当に神様が来て、あとでそのことに気づいて思わず笑っちゃったっけ。
『すでに………すでに、仕込みはできている。あとはマスターの思いが、奴に届くかどうかに全てがかかっている』
奴、とは一体誰なんだろう。それにしても、今のセリフの初めで一瞬チャクチャルさんがためらったような気がしたのが少し気になる。気のせいかもしれないけど、まるでなにかを悔やんでるような。
でも、それも後で覚えてたら聞くとしよう。目を閉じて神経を集中し、デッキトップに手をかける。そのままカードに触れた指先に思いを乗せていると、頭の中に声が聞こえてきた。いや、声ではない。明確な言葉ではないけど、何か意志の塊のようなもの。その気配が僕に近づいてきて、そのまま僕の様子をうかがっているのがわかる。きっと、僕の思いとやらを確かめているんだろう。
「大丈夫。僕ならきっと、君の力を使うこと
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