第五話
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男を見た瞬間ではなく、男が持っていたある物を見た瞬間だろう。
「すっ……スペルカード!? なんで持って……いや、持っていてもおかしくはないはず……」
「どっどうするのお姉ちゃん!」
「……止めるわ。今動いても周りは水中……逃げ場なんてないわ」
二人が話をしている間にも、男の持つスペルカードの光は強まっていく。二人は水の流れと弾幕を使って妨害しようと試みるが、男はそれに動じようとはしない。
ついに彼女達の攻撃は彼の目の前まで接近していた。
「これでいけ――」
二人が同時に笑みを浮かべようとした瞬間、男に向けて一直線に飛んでいた彼女体の攻撃が、まるで意志を持ったかのように男を避け、背後にあった壁に当たって消滅した。
何が起こったかわからず呆然とする二人。だが、不可解な出来事はさらに過度を増して行く。
「なに……攻撃があいつを避けたの?」
「そんなはず……おっお姉ちゃん、あれ!!」
「えっ……なっ!?」
男の周囲には徐々に空気あ集まり始めていた。もちろん、男がなにか空気をかき集めているような事をしていなければ、とつぜん機械を持ってきた訳ではない。だが、周囲の水はなぜか男を避けるように動いていた。それだけではない。部屋全体の水がどんどんと天井に向かって登り始めていた。
やがて完全に空気と水の位置が入れ替わると、男は地面に足をつけて彼女達に近づいてくる。さとり達は現状が全く理解できず、目を点にしたままその場を動く事ができなかった。
「何を驚いているかはしらないが、俺は何も特別な事はしていないぞ?」
「なにを……」
「俺の能力は拒絶を操るんだ。だからそれを利用した。もちろん、拒絶で操れるのは意志を持った者のみだ。水や弾幕の弾を拒絶で操るなんてことはできない。それで、こいつを使ったと言うわけだ」
二人はやっと現状をりかいしていた。男の使ったスペルカードは、自身の能力を強化するスペルカード。俊司と同じで、弾幕を作ることができない彼ら特有の考え方だ。つまりさっき攻撃が彼を避けたのも、水が彼や地面を避けるように動いたのも、このスペルカードの効果で拒否を操られていたからだ。言いかえれば、スペルカードが発動している状態では、彼に攻撃を当てることができない。
完全に不利な状況になっていることは二人も察していた。格闘戦では相手の速度に合わせることができないうえ、弾幕も軽々と避けられてしまうだろう。二人の顔にはあせりの色が浮かび始めていた。
だが、勝機はまだ残っているみたいだった。
「さあ……どうするか……な」
「えっ……?」
男はそう言いながら眉間にしわを寄せ始めていた。足元も少しおぼつかないみたいで、ふらふらしている。
(ちっ……薬がきれたか)
どうやら薬が切れた反動が出ているようだ。視界も少し霞んでおり、思った以
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