俺馴?その2ー1
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こに見えるは我が盟友さざめじゃあないか?お前一人でゲーセンに来るような奴だっけ?」
「―――」
さざめは何も言わず、何も聞かなかったことにして足早にその場所を通り過ぎることにした。即決即断。清々しいまでの聞こえなかったふりである。いっそここまで綺麗にスルーされると自分の見間違いだったのかと考えてしまう所だろうが、残念ながら今回の相手はそんな風にあっさり諦めてくれる人間ではなかった。
「あ、おい無視するなって!なあなあ、その袋に何入ってんの?というかカノジョはー?」
「黙れ便所蟋蟀が。その触覚みたいな二本の前髪引きちぎってやろうか」
「開口一番で汚い虫扱いアザーッス!!」
俺に罵倒されてこんな返事を返す奴は一人しかいない。
底抜けに何も考えてなさそうなアホ面に、馬鹿みたいに前髪から突き出している2本の荒ぶるアホ毛。そして罵倒されて感謝するという気持ち悪いマゾヒスト。馬鹿で阿呆で鬱陶しい上に馴れ馴れしい変態という特異な人間。
その名を、会いたくない筆頭だった2人の内の一人――東雲晴。
しかもその後ろにはさらに一人、何故こんな馬鹿と一緒に行動しているのかが分からない女が一人。こちらを見ておや、と意外そうな顔をしている。
「そちらの御仁はたしか晴の友達だという……ええと、シャークだったか?」
「友達じゃねえ。あと鮫じゃなくて冴鮫だ」
「そうそう、サザメであったな!これは失敬」
得心したようにぽんと手を鳴らすそいつは、その変態馬鹿男と何故か縁があるらしい幻の生物。少し前に海外から転校してきた金髪少女にして、晴に劣らない一本のアホ毛がそびえたつ一角獣。その名を倉知マイリという。
マイリと晴、この2人は外見も性格も大して似ていないのに、何故か日常生活における行動の思考回路が異様に似ている。似ているものだから、廊下でばったり出会うと互いに互いを避けようとして延々とパントマイムのようなシンクロニシティを発揮するのだ。そしてその際の2人の顔はうんざりしている訳でもなく真剣そのもの。似ているのか似ていないのかが実にはっきりしない。
そして、そのマイリも性格的には人懐っこくて空気が読めないアメリカン気質の人間。アメリカにいた頃から日本語を習っていたそうだが、時代劇大好きだった親の影響で妙に言葉が古臭い。
話しかけるのは構わないが、クッションの存在には気付くな!という全力の念を無視するかのように、俺の腕にぶら下げられたものの正体を目ざとく発見したマイリはパッと顔を輝かせた。
「……おおお!その手に持っているのはぬいぐるみクッションか!?もっとよく見せてくれ!……ああ、これはクマクッションとトドクッションではないか!」
「お、おいコラ引っ張るな!」
「え?ぬい
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