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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー1
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さざめを誘ったのだが……いや、今更そんなことを言っても仕方ない。

(ふんだ、いいもん。さざめくんがいなくたって一人で楽しめるもがゲーセンなんだから!)

考えていることは間違っていないのだが、それを自分に言い聞かせている時点で自分の本音が垣間見えているような気がする。ゲーセンにはカップルもちょくちょく見かけるのが余計にいりこの心根にちくちく針を刺した。あんなカップルに混ざって素直にクレーンゲームの方に手を出していれば、今頃は――と考えて、虚しいのでやめる。

そんな学者系天才少女いりこは、周囲のギャラリーが見守る中でとうとう最終ボスの前までたどり着く。何とラスボスは何故かかの有名な武将――源義経だった。

「って歴史が源平合戦まで戻ってるぅぅーーーーッ!?」

義経から語られる衝撃の事実。なんと主人公は戦っているうちに蹴鞠で次元を突破してしまったそうだ。スタッフの悪ふざけ全開である。



 = =



クレーンゲームに五百円を投入したさざめは見事に景品を手に入れていた。それまではよかったのだが――五百円を投入したのは迂闊だったとさざめは見事に後悔することになった。

「しまったな……まさかこんなことになるとは。くっ、持ちにくい……」

今、さざめの両手には人気景品であるアニマルクッションが入った袋が抱えられていた。その数、計3つ。信じられない事だが、なんとあの五百円6プレイでさざめは3つものクッションを手に入れてしまったのだ。
拍子抜けな事にも、始めたその一回目でクッションをあっさりゲット。残り5プレイ分の代金はいまさら戻ってこないので仕方なく続けたら、なんとその後2つも取れてしまったのだ。なかなかに大きいクッションだったため景品袋1つには入りきらず、やむを得ず2つの袋に入れて運んでいた。

しかも――周囲の目線が痛い。
というのも、どう見ても可愛い物好きには見えない男が両手に可愛らしいクッションを抱えてゲーセン内を歩き回っているのだ。実際にはそれほどの目線が送られていなくとも、さざめにとってこの状況は非常に気まずい。いっそこれで隣にいりこがいればまだ荷物持ちのように見えて誤魔化せたかもしれないが、残念なことに今のさざめは一人である。こんなのは自分のキャラではない。
通りがかりの女の子に「クッションかわいー!」と言われたり、店員の女性が妙に微笑ましいものを見る目でこちらをチラ見しているのが落ち着かない。自分はもっと冷めていてこういうアイテムには全然関心が無い男ではないか、と自問するが、まさか取ったものを捨てるわけにもいかない。誰か知り合いに押し付けたいところだ。

間違っても今、知り合いにこんな姿を見られたくはない。もしこれを悪友の達田や馬鹿の(はる)にでも見られた日には――

「あれ?そ
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