暁 〜小説投稿サイト〜
【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー1
[5/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
悪いと責任転嫁する。
一先ず、最近はいりこの正体について3つの可能性に絞って考えている。

その一。いりこ、超能力者説。
記憶改変などの特殊な能力を駆使して人間社会に入り込もうとしている。
その二。いりこ、人外説。
あいつの身体能力は妙に高いし、実は人でない存在が人に化けているのではないか。
その三。いりこ、未来人説。
実はあいつは未来からやってきたので、不可思議な現象は全て極度に発達した科学技術のもたらしたものである。

で、万が一いりこが普通の人間だった場合は――残念ながら俺の頭だけおかしくなっていることになる。そもそも、いりこの正体について考えれば考えるほど、俺だけがあいつを覚えていないことがおかしいのだ。
それとも向こうにしか観測できない特異性が俺にあるとでも言うのだろうか。――それこそ確認のしようがないことだ、とかぶりを振って立ち上がる。

不意に横を見ると、通りすがりのカップルらしき男女がクレーンゲームを後にしようとしていた。どうやら男の方が取ろうとして失敗したらしい。見た所クマをモチーフにしたクッションらしく、その形状は如何にも枕にしたら気持ちよさそうである。それに鋭く視線を向けて、ある事に気付く。

「――あれは、取れるな」

少々金がかかるかもしれないが、あれは取れそうだとさざめは思った。いりこの言うとおりいくらかは既に無駄打ちした小銭だが、財布の中身はまだ余裕がある。そして目の前に取れる商品があったら取ってみたくなるのが人情と言うもの。500円で6プレイと書いてあるため目算でそれくらいかかるだろうと500円を投入しボタンを押す。今月分の小遣いがだいぶ消費されている気がするが、まだ許容範囲内の筈だ。品定めするように左右からクレーンの形状と景品を眺めて、顎を撫でる。

「ふぅん、さっきやってた奴はなかなかに下手くそだったみたいだな。全然イケる角度になってないじゃないか」

ざっと見た所、狙いどころの耳などを引っかけるには都合のいい角度を向いている。狙ってやれない難易度ではない。ボタンを操作して、正確に自分の狙い通りの場所へクレーンを移動させたさざめは舌なめずりした。ここいらで景品をゲットしてクレーンゲームの素晴らしさをいりこに思い知らせるのも悪くない。

――ただ、さざめは少々迂闊な行為を取っている事にまだ気付いていない。
さざめは目つきが悪い。時折不良に間違えられることもあり、事実として準不良程度の素行である。そんな男がゲーセン内で、もこもこのクマさんクッションを抱えていたら、周囲にどんな目で見られるのか。



 = =



――彼女は12枚目の百円玉で最終ステージである6面にまで辿り着いていた。
ただ偶然辿り着いたのとはわけが違う。弾丸の発射に使用するプログラムから開発
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ