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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー1
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められると血が滾る気がするのだ。

(向こうの世界じゃまだ娯楽が少ないんだもん。旧文明では栄えてたみたいだけど、復元が難航してるし………)

向こうの世界ではデジタルなゲーム機というものは、諸事情によりほぼ失われている。
辛うじてパソコンのミニゲーム程度のものならば遊べるが、RPGや本格的なアクションゲーム等はまだ発想の外と言ってもいい。そもそも地球の文化の中でもサブカルチャーの類は大半がデータロストしており、現在は過去のデータをサルベージして復元している段階でしかゲーム機というものが無い。
物語の類はあるが、それでも地球再開発に勤しんでいた地球移民は非常に忙しかったため、作家などいない。となると必然、移民元の惑星にあった物語が延々と回される事態になる。最初はそれで良くとも、流石に移民2世が誕生することには完全に飽きられていた。子供たちの中にも当然飽きる者が出てくる。

いりこなど、あまりにも退屈が過ぎたせいで、神秘属性数の構成数列で最難関と言われる「0(エイン)0(ソフ)0(オヴル)」の神秘数列を延々と解読するという異次元の娯楽に手を染めていたほどだ。
……その結果、いりこは向こうの歴史上3人目の「0(エイン)0(ソフ)0(オヴル)」習得者になるという歴史的偉業を達成していたりするが、ともかく彼女はなんにでも熱中できてしまう人間なのだ。こと、細かくて作業的なことになると病的な集中力が如何なく発揮される。それが証拠に、彼女は快進撃を続けていた。
ただ一つ。さざめに腕前を褒めてほしかったという密かな願望が叶わなかったことに少しだけ残念な感情を抱きながら――いりこはその一抹の寂しさに蓋をした。

「さあ、じゃんじゃん撃つぞぉぉーー!!」

女一人。友達も連れずにゲームセンターで独りぼっちの彼女の背中には、微妙に残念な人の哀愁が漂っていた。



 = =



(いりこレポートその37:シューティングゲームに熱中するやり込みゲーマーである。今までの傾向からしてサブカルチャーに関する関心が深いらしいが、それとあいつの存在の因果関係は不明……っと)

スマホのメモ機能に手早くいりこの生態観察を書きこんださざめは、ゲーセンの隅のソファで一息ついていた。

いりこレポートとは、未だに判然としないいりこの正体を暴くのに役立つかもしれない情報をちまちま書きこんでいる研究資料である。内容は割としょうもないことばかりだが、それでも積み重なればなんとやら。重ねて行けば見えてくることもある。先ほどのサブカルチャー好きもその一つだ。
ふと、こんなものを書いていることを周囲に知られれば危ない男だと思われるのではないかという疑惑を抱く。周囲にはストーカー扱いされそうだが、こんなことをしても尚あいつが何者なのか分からないのが
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