暁 〜小説投稿サイト〜
【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー1
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
めは浪漫を解せない男だ。楽しい事は健康にもいいと言うのに。そうやってストレスを溜めて病気になってしまえ、と吐き捨てたくなるが、弱ったさざめというのはイメージが全く湧かない。

(さざめくんも付き合い悪いよねぇ。普通女の子の誘いについていっておいて自分だけどっか行く?)

ゲーセンに一緒に来たのは、たまには遊びに行こうという話になったからだ。
実を言うと、いりこもさざめもそれなりに互いの家へ遊びに行くことがある。提出しなければいけないけれどやるのが面倒、という課題があるとさざめは直ぐにいりこに手伝ってもらおうとし、その代金代わりにいりこがさざめの家に遊びに行許可を得る。そんなこんなで行き交いはしているのだ。

そんな中で、いりこが「偶には家の外に遊びに行ってもいいよね」と半ば強引に連れだしたのがゲーセンだった。女の子らしいチョイスかと言われれば微妙なところだが、生憎デートのいろはなど知らないいりこはこれといって深く考えずにここに連れてきた。ところが、それなりにテンションの高いいりこに反してさざめの反応は芳しくなかった。その2人の温度差がこの現状を招いたのかもしれない。

内心は恐らく退屈半分照れ半分。しかし素直でないさざめがテレなど表の感情に出すわけもなく、結果として退屈だけが前に出てしまったのだろう。少し失敗したかな、と気が沈むが、直ぐに目の前の戦いに顔を向ける。

弾幕に次ぐ弾幕。なだれ込む敵。そして立ちはだかる異形に成り果てた名武将たち。その行動パターンを読み、アルゴリズムを解析し、自機の行動を最適化していく。いりこは既にゲームを楽しんでいるという領域を超え、一つの精密機械と化そうとしていた。

ボタンをタップしながら小刻みに画面内の自機を操り、そのミスが許されない緊張感にペロリと舌なめずりする。このギリギリの中で己の精神をどこまで研ぎ澄ませるか、その感覚が堪らない。全身の集中力が身体からはがれ、正面の画面に集中していくような感覚・・・一種のトランス状態へといりこは突入する。

さざめは知らなかったことだが、『金ヶ崎イクリプス』は歴代シリーズ最難関と名高い難易度を誇る。特にゲーム開始直後のスタートボタンで隠しコマンドを入力することによって、隠しモード『難易度:悪鬼羅刹』に挑戦することが出来る。その難易度たるや従来のそれより飛躍的に向上し――開発者でさえクリアが難しいと言われる領域にまで達していた。
既にこのゲーセンより先に稼働した店でゲームに挑んだSTGプレイヤーたちが「開発スタッフは悪鬼羅刹」「誰がここまでやれと言った」「樋口さんを生贄に奉げても1面の中ボスを突破できない」などの悲痛なコメントを残している。

だが――難易度が上がれば上がるほどにいりこは挑戦したくなる。
なんというか、こういった難易度の高い作業を求
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ