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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴?その2ー1
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したいりこ。さざめにはさっぱりわからないが、操作しているいりこの感覚では攻撃の命中判定範囲が広くなっているそうだ。そんなことが分かるようになるほどに彼女はこのシリーズをやり込んでいた。
それを理解できるほどゲームが上達するのにいったい幾らの金をかけたのやら。少なくとも二千円や三千円では済まないのだろう。それだけの金があればクレーンゲームでお菓子やぬいぐるみを取った方が有意義に思える。
が、そこでさり気なく痛い所を突いてくるのがいりこという女。鋭い指摘が飛んでくる。

「そぉいうさざめくんはクレーンゲームやってて楽しいの?あんなのあっという間に終わるし、アームの強さとか変な設定いっぱいあるしで全然思い通りにいかないじゃん!現にさざめくんの本日の収穫ナッシング!!」
「うぐっ……い、いいんだよ!本気で欲しい景品は無かったし、そもそもこの辺のゲーセンじゃ調整キツイから当たらない方が多いの!」
「で?で?そんな理由で五百円浪費したのに何の効用も得られてないさざめくんになんで楽しさを説かれなきゃいけないの?……っとぉ、危ない危ない。ホーミングキツイなぁこの足軽大砲」
(どんな大砲だそりゃ……?)

なんだかんだ言いつつもゲーム画面から一切目を離さないその集中力をもっと別の所で使うべきだと思うのだが、いりこは優等生の割に変なところで浪費家だ。この間も神社のおみくじが何種類あるかを調べるとか言って1回2百円のおみくじを大量に引きまくっていたし、その前は博物館のおみやげを計数万円分買い占めたらしい。謎の生態である。
そしてその理解しがたい傾向は今現在も全面に表れており、ムキになったいりこの反論には随分熱が籠っていた。……付き合わされるこっちの身にもなって欲しいのだが。

「こぉゆうのはね、やってる人にしか解んない楽しみがあるんだよっ!ゲーム音痴のさざめくんには分かるまい、エンディングを迎えた瞬間の達成感がっ!」
「あーそうかいそうかい。じゃあ満足するまで勝手にやってろ。俺はついて行けん!」
「……あ、あれ?帰っちゃうの?」

さざめは返事を返さずすたすたとゲーム筐体の前を後にして、ゲーセン内部の人ごみに紛れていった。理解できないものを横で見てても、それこそ楽しいことなどないから。
背後から子犬が見つめてくるような寂しげな目線が刺さったような気がしたが、ここで振り返るのもなんとなく癪なのでそのまま去った。



 = =



去りゆく仮初(かりそめ)の幼馴染を横目で見ながら、いりこは不満そうに口元を歪めた。このゲームの素晴らしさを知ってもらいたかったのだが、言うに事書いてやって得するのか、とはひどい。そのような利益追求主義みたいな考え方は視野を狭めてしまうだろう。
そもそも娯楽というものは元々生産性のないものだろうに、さざ
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