第二部 vs.にんげん!
第24話 つじぎり!
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眼下の路地の迷路に視線を彷徨わせる。
「あそこ!」
ノエルが叫んだ。彼女はすぐに気を切り替え、呪文を呟きながら石板を撫でる。火の矢が放たれた。それを目で追った先に、エレアノールを見つけた。魔法の火矢は、エレアノールと賞金稼ぎ達の間に着弾した。炎が燃え上がり、男たちを足止めする。エレアノールはその間に、屋根と屋根の波の間に、飲まれて消えていった。
「――何だってんだよ!」
ウェルドは悪態をついて、屋根の上にフリップパネルを敷き、踏んだ。
「ウェルド!?」
ノエルが手を伸ばす。
「ちょ、ちょっと――」
屋根の縁で手を伸ばして、
「こんな所に置いて行かないでよ!!」
その声はウェルドには届かなかった。
「待てお前らぁっ!」
炎を避けて別の路地に入りこんだ賞金稼ぎ達は、既にエレアノールを見失っており、アルバートとボスマンも、この男たちを見失っていた。
ウェルドは叫び、低い屋根から雪積もる路上に直接、飛び降りた。間の良い事に、近くの建物の壁に、穂の研ぎ澄まされていない槍が数本立てかけられていた。制作中の物だろう。という事は、この建物は、鍛冶屋かもしれない。
突如眼前に飛び降りたウェルドの前で、二人の賞金稼ぎが立ち竦む。ウェルドは素早く槍を取った。なまくらの槍の帆を、一人の男の頭に叩きつける。男は白目をむき、昏倒した。
ウェルドは間髪入れず槍を振り回したが、もう一人の男には掠りもしなかった。背を向け、逃げていく。
「待てって言ってるだろうがっ!!」
男が逃げていく方向へ、ウェルドも駆けだした。
と、眼前に、一人の男が立ちはだかる。思わずその場に硬直した。
ただならぬ気迫を纏う男だった。
冬だというのに薄着で、袖を肩までまくり上げ、色黒の筋肉質の腕をむき出しにしている。その腕が火傷のように赤いから、火の前にいたのだとわかった。
だとしたら、この鍛冶屋の主人なのだ。
男が剣を抜いたので、ウェルドはわけがわからなくなった。
更によく見れば、男は笑っているので、ますますわけがわからない。実に嬉しそうに笑っているのだ――ウェルドに、殺気を放ちながら。
「はっ? 何――」
男の肩が小刻みに震える。ついに声を上げ、笑い始めた。風が暴れる。男の長い髪が、一瞬、その顔を隠した。
「動くなよ」
男は、顔から髪を払い言った。
「生きた人間で試し切りできる機会は、そうそうないからな……」
「へっ!? えっ!? 何でっ!?」
男の剣が雪明りを集め光る。ウェルドはたまらず、制作中の槍を抱えたまま背を向け逃げ出した。
男がたちまち背後に迫る気配。雪が積もっている中とは思えぬ俊敏さだった。ウェルドはフリップパネルを使い、屋根の上に飛んだ。直後、空を切る刃の風を感じた。
「なん、なん、なん――」
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