第3章 揺れる想い
3-1 すれ違い
すれ違い
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い」
「心配いらないよ。来週はいつも通りだ」
ケンジはそれでも明らかにばつが悪そうに瞳を泳がせ、焦ったように彼女から離れた。
ミーティングが終わった後、ケネスがケンジを呼び止めた。
「ケンジ、明日から世話になるけど、よろしゅうな」
そして軽く肩をたたいた。
「あ、ああ。遠慮するな。気楽な気持ちで来いよ」
「土産も持って行くさかいな」
「土産? なんだよ、それ」
「今は秘密や。っちゅうても、別に秘密にするようなもんでもあれへんけどな」
ケネスはにこにこ笑いながら自分の荷物を肩に担いだ。
「……」
ケンジはじっとしてうつむいていた。
「どないしたん?」
ケネスはケンジの顔を覗き込んだ。
ケンジは一つため息をついてケネスに顔を向けた。「ケニー」
「何? どないしたんや?」
「……」
「歩きながら話そやないか。もう遅いで。家族も心配するやろ」
「……そうだな」
ケネスは来日してから学校の学生寮に寝泊まりしていた。学校へ向かうルートをケネスと並んで、自転車を押しながらケンジも歩いた。
大会会場を後にして、二つ目の交差点を過ぎたあたりで、ケンジが唐突に口を開いた。
「仮に、仮にだぞ、」
ケネスはちょっとびっくりしてケンジに顔を向けた。
ケンジは少し顔を赤くして続けた。「お、俺に彼女ができたとして、その子が好きで、そ、その、か、身体を求めたくなったとしたら」
「彼女、できそうなんか? ケンジ」
ケンジは慌てて言った。「だ、だから、仮に、って言っただろ。彼女なんか、いないけどさ……」
「ほんで、求めたくなったとしたら、何やねん」
「その気持ちって、本当の『好き』っていう気持ちなのかな」
ケネスは少し考えてから言った。
「そやな、男っちゅう生きモンは、ある意味性欲の塊やからなー。ヤりたい気持ちを恋心と錯覚してまうことはあるかもしれへんな。特に高校生ぐらいやったら」
「やっぱり……そうだよな」
ケンジはまた小さなため息をついた。
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ケネスはそんな彼の表情をちらりと見て、ぽつりと言った。
「問題は、ヤった後の気持ちやな」
「ヤった後?」
「そや。性欲抜きで、自分が相手をどう思てるか、ってことは、事後にしかわからへんやろ? いわゆる『賢者タイム』」
「お前、そんなことよく知ってるな。日本に住んでもいないくせに」
「男子の性行動は世界共通やないか。それに的を射た素晴らしい言葉やで、『賢者タイム』」
ケンジは呆れたように眉尻を下げた。
「その子がほんまに好きやったら、コトが終わった後に抱きしめてても、心は熱いままや。それで確かめられるんちゃう?」
「そうだな……」
ケンジは少しだけ微笑んで、ケネスを見た。「すま
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