第3章 揺れる想い
3-1 すれ違い
すれ違い
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ついて、自分の部屋に入っていった。
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火曜日も水曜日もケンジの反応は同じだった。マユミは日に日にケンジへの想いが募り、夜はケンジの身体の温もりを想っては自らを慰めるのだった。
そして木曜日。
「……ケン兄、」
「マユ、ごめん。最近相手してやれなくて」
「あたし、寂しい。何だかケン兄がほんとに遠くへいっちゃう気がしてきた」
「大げさだよマユ。大会が終わったらまた一緒にチョコレートタイムしよう」
「あたし、待てない。そんなに」
ケンジは少しむっとして言った。
「俺だって、おまえといれば癒される。でも、大会も大事なんだ。わかってくれよ」
「癒してあげるよ。いつでもあたし、ケン兄を癒してあげられるから」マユミは少し涙声になっていた。
「もう少し我慢してくれ。マユ、お願いだ」ケンジはそう言ってマユミの肩に手を置いた。
しかしマユミはその手を振り払うと強い口調で言った。「もういいよ! ケン兄。あたしの気持ちなんかわかってくれないんだ」そして彼女は自分の部屋に戻り、ドアを一方的に閉めた。
◆
「あんたたち、ケンカでもしてんの?」
金曜日の夕食時、母親が切り出した。明日の大会に備えて、前日の今日はケンジの帰りは早く、いつものように家族四人で食卓を囲んでいた。
「え?」マユミが手を止めた。「な、なんで?」
「今朝から会話がほとんどないじゃない。ついこの前はデートしたりして、超仲良さげだったのに」
「デートじゃないから」
「あのね、兄妹ってのは一生で一番長くつき合う人間なんだからね。いがみ合ったりしたらきついわよ。って、こないだ言わなかったっけ?」
「べ、別にケンカなんか、してないよ。なあ、マユ」
「う、うん。そうだよ」
「ならいいけど……」
しばらくの沈黙の後、ケンジが躊躇いがちに口を開いた。「そうそう、明日の大会、おまえも来てくれるだろ? マユ」
「……行けないかも」
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母親が口を挟んだ。「なんで? あんたの学校の水泳部も何人か出場するんでしょ?」母親が怪訝な顔で言った。
「うちからは出ないよ。弱いから」
それだけ言うとマユミはさっさと食器を片付けて二階へ上がっていった。
「やっぱりあんたたちケンカしてるんじゃない」
母親の言葉に応えもせず、ケンジは一つため息をついて立ち上がった。「明日早いから、俺、もう寝るよ」
◆
土曜日。ケンジは競泳の大会に出場するため、暗い内から家を出た。遅く起きたマユミは母親と向かい合って朝食をとっていた。
「あんたも行くでしょ? ケンジの水泳の大会」
「友だちと約束があるから行かない」
「何それ。冷たい妹ね。いつも必ず行ってたじゃない。ケンジが出
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