ユグドラシル編
第10話 Calling
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
自宅の自室。関口巴に許された小さなテリトリー。その部屋のベッドの上で、巴は膝を抱え、ある人に電話をかけた。
コール音が2回。お目当ての相手はすぐ電話口に声を聞かせてくれた。
「もしもし。亮二さんですか」
《おう。トモか。どうした?》
初瀬は巴のことをいつのまにか「トモ」と呼ぶようになっていた。ニックネームなど幼稚園以来で、嬉しくて特に訂正せず呼ばせている。
「ちょっと、ここ何日かたくさんのことがあって。親以外の人の声を聞きたくて」
《そうか――んじゃ、しょうがねえな》
電話口から、どさっと何かに腰かける音がした。初瀬は腰を落ち着けて巴の話を聞いてくれるらしい。
「はい。……」
言葉が続かなくなって巴は黙った。否、続けるべき言葉はある。だが話せば確実に初瀬亮二も当事者にしてしまう。
「……結構、重い話です。それでも続き、聞きたいですか?」
《バ〜カ。今さら俺がお前に他人面できるか。ほら、話したかったんだろ。吐けるだけ吐いちまえ》
巴は知らず笑顔になり、飾ってあった白馬のぬいぐるみを抱き寄せた。
巴は語った。ユグドラシル・コーポレーションの実態。角居裕也および呉島碧沙に加えられている倫理スレスレの研究。アーマードライダーもまたモルモットだったこと。全てが地球の存亡に関わることで、巴は手を出しあぐねていること。
《それ、ヘキサとは話したのか》
「いいえ……学校にいる間は、わたしと碧沙は話せませんから」
碧沙は世界を背負うこととなった男女の片割れ。そうでなくとも、人気絶頂の碧沙と、巴の関係は秘されたものだ。
さらには巴は碧沙から「関わらないで」と言われている。その言葉の通り、碧沙は学校では一切合切、巴に話しかけないし、目も合わせない。
《けどそれさ、結局問題から目逸らしてるだけだって、お前も分かってるんじゃないか?》
「っ、それ、は……はい。でも碧沙がそうしてほしいなら、そうする以外、わたしには何も……」
《できることはない?》
「はい――」
《そうか……苦しいな》
巴は、はっとした。苦しい。そう、自分は苦しいのだ。碧沙に何もできないことが。碧沙を助け出してやれないことが。初瀬に指摘されて巴は初めて気づいた。
《けどさ。俺は、お前にできるのがそれだけ、とは思わないぜ》
「どうしてですか?」
《俺がそうだったから》
巴は首を傾げる。自分は初瀬に何かしただろうか? 弱った彼に付け込んで、憂さ晴らしに連れ回したくらいしか記憶にない。初瀬はそんな巴の甘えを見抜き、汚れ役を買ってまで巴を帰してくれた。
《あの時、俺は力が欲しくて堪らなかった。そんなとこにお前が現れてさ、平和にゲーセン巡りさせられて。でもそれが、ささくれてた俺を、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ