ユグドラシル編
第8話 「友達」ってどこまで?
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巴は、朝日の降り注ぐ教室に入り、脇目も振らず自席に着いた。
教室の時計を見やる。――早く来過ぎた。始業までまだ30分以上ある。
巴は教科書とノートを机に出し、予習を始めた。
昨日はユグドラシルから家に帰ってすぐに寝てしまったから、やっていない。その分をここでやる。こうしていれば始業まであっというま――だと思ったのに。
教科書の内容が頭に入って来ない。5分粘り、巴は溜息をついてシャーペンを机に投げ出した。
時計の針の動きのなさが、苛立たしい。
教科書とノートを机の中に片付け、窓へ行ってベランダに出た。
寒い。だが教室内に戻る気にはならなかった。HRが始まるまでの間、ユグドラシルに捕まっていた時のことでも考えよう。
(わたしたちが大人になる頃には、地球は怪物の巣窟で、食べ物はヘルヘイムの果実しかありません――ってことよね。要約すると。終末系の話って洋画のCMで食傷なんだけど、隕石でも水害でも氷河期でも宇宙人でもなく、植物ってとこが盲点だったわ)
校庭を見下ろす。徐々に増えてくる登校者、未来に落ちた翳りも知らず、さんざめく紺色の少年少女。
(今ここで碧沙に聞いたこと全部暴露したらどうなるかしら。――――。だめだわ。わたし一人、頭のイカれた子として窓際族。それくらいなら黙っていたほうがマシ。10年後にはいずれ知るのだし、今は青春を謳歌すればいい。それが例え勉強第一で規則に厳しい進学校の青春でもね。どうせよろしくやってるんでしょうから)
次に巴が思うのは、巴を救って脱出してくれたアーマードライダーたち。鎧武の葛葉紘汰と、バロンの駆紋戒斗だ。
(彼らは彼らで、それぞれにユグドラシルを探る目的があったそうだけれど、特に葛葉紘汰のほうが、角居裕也の暴露で迷い始めている。頼りになるかは怪しい。やっぱりわたし一人で考えて、行動しなくちゃ)
誰にも頼れないことを再確認したからか、手摺を握る力が強まった。きっと指先は赤い。
放課後になった。碧沙は欠席のまま姿を現さなかった。
巴は足早に、最近のステージにしている路地に向かい、待った。
いつもなら放課後は彼女たちのステージだ。だが待てど暮らせど碧沙は来ない。
いつも落ち合う時間を待ち合わせというなら、待ち合わせ時間からはゆうに2時間が過ぎていた。
座り込んでいた巴は、膝を抱えてそこに口元を埋めた。
(よく考えたら、わたしは碧沙のことを何も知らない。家も知ってる、学校も同じ、携帯の電話番号は交換した。でも、それだけ。好きなもの、嫌いなもの、やりたいこと、やりたくないこと、何も知らない。そんな有様で友達だと思っていたなんて)
巴はのろのろと学生鞄を掴み、立ち上がってスカートの砂を
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