ユグドラシル編
第4話 CACE “Hexa Kureshima”
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時は本当に驚いたよ。残り香とはいえヘルヘイムの果実を『気持ち悪い』なんて表現する人間は今までいなかったからね。私でさえそもそもヘルヘイムに抗いうる人類がいるなんて発想はしてこなかった。ちょっと系列病院の診察記録を調べたら即ビンゴ! ってわけ。以降は定期的に検査記録を採らせてもらったよ」
ここで「犯罪ですよ」と言い返すのも考えたが、彼相手にそれを言っても無駄そうなので、碧沙は黙ることを選択した。
「だがキミの特異な体質は我々にとって、いいや人類全体にとっての希望と言える。呉島碧沙君。キミの存在は、我々が諦めかけていた、全人類を救う道を拓くかもしれない」
以来、凌馬が碧沙に対して行った「検証」は筆舌に尽くしがたい。
まずは本当にヘルヘイム感染がないか確かめるために、碧沙は1週間に渡ってヘルヘイムの果実を食べさせられた。まずかった。泣いた。吐きもした。それでも完食するまで凌馬は笑顔で圧力をかけ続けた。
続いては採血や粘膜の細胞の採取。血管はやがて針が通らないほど硬くなり、時には指の間や足からも採血された。粘膜の細胞も、口ではとても言えない部位から採取されたこともあった。
CTで、MRIで、レントゲンで、時には肉眼で、肉体を余す所なく曝され、暴かれた。
そんな日々を送っていながらも、呉島碧沙の心は壊れることはなかった。
インベスは人間。“森”の調査にはインベス討伐が付きまとう。つまり、当時は唯一のアーマードライダーだった貴虎が、元はヒトであったものを殺さねばならなかった。
碧沙は貴虎にインベスを殺す苦しみを負わせたくなかった。
自分の体からインベスを人間に戻す何かが見つかるのであれば、兄の苦しみも終わらせられる。だから碧沙は痛くて辛い「検証」を正気で続けていられた。
それでも心が弱った時は、巴がいてくれた。
たまたま知り合った、けれど時を重ねて親友になった、大切な大切な巴が。
(だから許せなかった。戦極ドライバーを持つことはそのままモルモット扱いを意味するから。わたしがドライバーを巴に渡したのは、そんなことさせるためじゃない)
碧沙は学生鞄の外側のポケットから、ユグドラシル・コーポレーションのロゴが入った薄いカードを取り出した。碧沙が訪れることを許された範囲でのゲートパスだ。
碧沙はカードを握りしめ、巴たちがいるであろうフロアへ向かった。
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