ビートライダーズ編
第9話 聖なる祝日の迷子 A
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時は、少女たちがインベスに囲まれた直後まで遡る。
巴は“森”をひた走っていた。
インベスを碧沙から遠ざけるためとはいえ、走り続けることはできない。なので途中で錠前の形をした果実をちぎっては投げ、逃げてはちぎり――をくり返していた。そうするとインベスは果実を食べるのに夢中になって、巴が逃げる隙が出来るのだ。
だが、果実に惹かれて新しいインベスが出ると、巴は再び走らねばならない。
「ゼェー…ハー…」
巴は近くの幹に背中を預けたまま、ずるずると座り込んだ。
(も…走れ、ない…)
インベスが4体ほど迫ってくる。だが巴の足はもう動かない。いくら体育が得意でも限度がある。
死から目を逸らしたくて、巴はきつく瞼を閉じた。
《 オレンジスカッシュ 》
『だありゃあ!』
斬撃の音と熱を帯びた風。巴は恐る恐る目を開けた。
そこに立っていたのは、紺のライドウェアの上からオレンジの鎧を重ねた鎧武者だった。
「あなたは……」
知っている。“ビートライダーズホットライン”で何度も観た。チーム鎧武の助っ人で用心棒。アーマードライダー鎧武の変身者――葛葉紘汰。
彼は変身を解くと、こちらを顧みて手を伸べた。
「大丈夫だった?」
「は、い」
巴は一人で立ち上がった。紘汰はバツが悪そうに伸べた手をぷらぷらさせた。
「君、名無しのビートライダーズの子だよな。どうしてこの“森”にいたんだ?」
「名無しの――」
「ああ、ごめんっ。チーム名がないからみんなそう呼んでて。イヤだった、かな」
「特には」
「そ、そっか。ええっと、こんなとこで一人じゃ危ない。俺、外へ送ってくよ」
「すみません。申し出は有難いのですが、まだ友達が残っているんです。探さないと」
巴のいない場所で碧沙が倒れでもしたら。そうでなくとも“森”に入ってから碧沙の体調はおかしかった。
「友達? 一緒に踊ってるあの子?」
「はい。――あの」
「ん?」
「チームは名無しですが、わたしたちには名前があります。わたしは関口巴、あの子は呉島碧沙です」
「そっか、そうだよな。ごめん。俺は葛葉紘汰。紘汰でいいよ。巴ちゃん、でいいかな。その碧沙ちゃんを探すまで、俺と一緒にいるってのはどう?」
「あなたと?」
「ここにはインベスゲームで使うインベスよりずっと強いのがうじゃうじゃいる。そんな中を女の子一人で歩かせるのは心配だし。俺も探しものしてるんだ。一緒に歩いてたら、どっちか見つかるかもしれない。俺はアーマードライダーだからインベスが出ても守ってやれるし。悪い話じゃないだろ?」
先ほどのようにインベスに囲まれてどうにかする力は巴にはない。碧沙にもない。ここは彼の護衛を借り
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