第三章
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トにしてみたよ。君の言う通り」
「あの、伯爵」
唖然とした顔で馬車を見ながら言う。
「どうしたんだい?今日はソフトだろう?」
「あのですね」
とにかく言葉を出す。苦労して言葉を出す。
「とりあえず乗りましょう」
「うん」
こくりと頷く。こうしてまた二人は車中の人と成った。だが今度は馬車である。進む間も学校の生徒達の視線があったし今でも皆の引いた顔が目に浮かぶ。その中でジョゼフに対して言う。
「ソフトにって言ったじゃないですか」
「ソフトじゃないか」
ジョゼフはこう返す。真剣な顔で。
「だから馬車で来たんだ」
「馬車がソフトなんですか!?」
「違うのかい?」
彼は逆にそれに問い返す。
「車よりも。ソフトじゃないか」
「そうは思わないですけれど」
ナンシーの声は賛同する色ではなかった。それがはっきりとわかる。
「どうしてそう思えるんですか?」
「車は燃料がかかるじゃないか。それにあれはロールスロイスだ」
「ええ」
「こちらの方がロールスロイスよりはソフトじゃないかって思ってね。何しろ我が国が世界に誇る最高の車なんだからね」
「それでも馬車よりは目立たないです」
ナンシーは言う。
「私はそういう意味で言ったんですけれど」
「馬車も駄目なのか」
「はい」
揺れる馬車の中で答える。外ではイアンが馬を操っている。何かここだけ十九世紀になったような気分だ。イギリスでもこんなことはまずないことである。
「他のを考えて下さい」
「わかった」
彼はそれに頷く。
「じゃあ他のを」
「馬とか車とかじゃなくですよ」
そう言ってきた。
「いいですよね、それで」
「任せておいてくれ」
彼は頷いてきた。
「君との約束は守る。必ず」
そうナンシーに誓った。グリッジ家は約束は絶対に守る、そう家訓で決められているのだ。これは昔からでありこの家の人間は戦場で正々堂々と戦ってきた。それはジョゼフも同じで先日の喧嘩もそれまでのスポーツの試合も常に正々堂々と戦ってきた。負けることがあっても悪態なぞつかず素直に相手を賞賛してきた。そうしたいい意味でのイギリス貴族の精神を持っていたのである。
「それを誓おう」
「それでは」
「うん。また明日だ」
彼は言う。
「それでいいね」
「本当にお願いですよ」
彼女は言う。
「馬車はやっぱり」
そんな話をしながら道を進む。彼等が乗る馬車は時折観光客達のフラッシュを浴びながらナンシーの家まで進んでいた。ナンシーにとっては困った時間になってしまった。
ナンシーを家まで送るとジョゼフは自分の部屋で一人思索に入った。セイロン産の紅茶を前にソファーに座り一人考え込んでいた。そこに扉をノックする音が聴こえてきた。
「入れ」
「はい」
やって来たの
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