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東京百物語
ゆり
二本目★
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だ。出なければ…。でも、何かがゆりに「違う」と囁く。



 違和感の正体はすぐにわかった。ゆりは、時計を確認する。短針が指すのは十一。つまり、今の時刻は深夜二十三時。よく考えずとも、誰かが訪ねてくるような時間ではない。そして近くに、こんな夜遅くにゆりの家を訪ねてくるような気安い友達は住んでいない。



 しかしノック音自体を気のせいだと思えば思い込めるほど小さな音だった。



 少しの間ゆりは逡巡してから、そっと部屋の電気を消した。咄嗟に居留守を使おうとの考えだった。



 女子の一人暮らしは色々と用心しなければならない。先ほどのノックが聞き間違いでなかったとしても、こんな時間に家を訪ねてくる人間が常識を持った人の筈がない。



 そう決めつけて、ゆりは息を殺してやり過ごす。



 三十分ほどそうしていただろうか?もういいだろうと、ゆりは電気をつけて、テレビのリモコンにも手を伸ばした。しかしその電源を入れる直前だった。



(コン、コン)



 嘘…!?



 ゆりはそれとわかるほど震えあがった。



 即座に電気を消すと、気のせいだ気のせいだと言い聞かせながら布団を被り眠ろうとした。眠れる訳もなかったが、その夜はそれ以降ノックが聞こえてくることはなかった。



 そして当然、次の日ゆりは寝不足だった。



(ねむ…)



 ゆりはあくびを噛み殺しながら一日を過ごし、家に帰ってきた。今日も、帰宅時間は二十三時。眠さに襲われているゆりは、昨日の恐怖をもう忘れていた。



 いつものように家の電気をつけ、ベットに座る。このまま眠りたいぐらいだ。実際、ゆりはうとうとと舟を漕いでいた。



(ガチャ)



 突如大きい音が響いた。ゆりは眠気も飛んだ勢いで顔を上げた。大きく開かれた瞳で、入り口を激しく凝視する。



 ドアは、開いていない。



 けれど今の音は、ドアノブが、外からまわされた…音だ。



 そして嫌なことに気づいてしまった。



 ゆりのアパートは、ドアの横が大きな窓になっていて、磨りガラスなので向こうに人が立っていれば黒い影として見えるのだ。



 絶対にあるはずのその影が、ない。今日も、そして昨日も。誰もいないのに扉が鳴り、ドアノブがまわる。



 足音、足音は…した?いいえ、来る足音も去る足音もしなかった。



 では一体何が、昨日ゆりの家の扉を叩き、今またドアノブに手をかけたのか。



 昨日はノック、今日はドアノブ…それなら明日はどうなる?



 もう限界だった。ゆりはこどものように膝を抱えて泣き
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