幽鬼の支配者編
EP.21 動乱
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、感情を隠すのが下手なんだもの。意外と可愛いとこあるじゃない」
赤くなったワタルが怒りだす前に、ルーシィは病室を後にした。
振り上げた拳の矛先を無くした彼は溜息を吐くと、眠っている三人に語りかける。
「……そんなに俺は分かりやすいかね……」
もちろん帰ってくる訳でもなく、答えを期待した訳でもないワタルは頭を振ると、気分転換に屋上に向かうのだった。
「(戦争、か……)」
病院の屋上に着いたワタルは考える。
「(ギルドやレビィ達を傷つけられて、みんな怒ってる。それは俺だって同じだ)」
幽鬼の支配者を潰そうとは思わないのか……。
気持ちいい位に晴れていて、暖かい陽光が降り注ぎ、穏やかな風が吹いている……爽快な空間だが、ワタルの脳内は外とは対照的に暗いものだった。
なんで仲間を傷つけられても、犯人を、ファントムを潰そうとは思えないのか……。
考えてしまうのはファントム、そして自分の事。これでは気分転換になどならないのだが……静かな場所で一人、ゆっくり思考するには条件が良すぎたのだ。
『殺意、憎悪、憤怒、悲哀、恐怖…………戦場で蠢く多種多様の負の感情と怨敵の血は我への供物。……その感情を燃やすがいい、ヤツボシの子よ』
この場にはワタル以外には誰もいないにもかかわらず、ワタルに『声』が掛けられた。この怪奇現象に狼狽えるのではなく、彼は間髪入れずに、うんざりとした様子で切り捨てる。
「うるさい、黙れ」
『……久しぶりだというのに、随分な言い草だな』
「その久しぶりの第一声がそれか。変わらねえな、お前も……つーか、あんまり久しぶり過ぎて、死んだかと思ってたよ。いちいち付き纏いやがって……死ねばいいのに」
『それが永劫叶わぬことは、分かっているのだろう? 修羅の子よ』
その『声』……無数の男が異口同音に喋っているかのような『声』は、普段ならば絶対つかないような悪態を鬱陶しげにつくワタルを嘲笑うかのように語りかける。
気が付けば、そこに広がっていたのは日が差すマグノリアの風景ではなく、果て無く広がる灰色の雲に覆われた薄暗い世界。足元も座っていたコンクリートから、底の見えない濁った血のような赤黒い液体へと変貌を遂げていた。所々に刀や槍、鎌や薙刀が突き刺さっているその風景は、まるで戦場跡のようだ。
「……相変わらず胸糞悪い景色だ」
『それでも我に、我らにとってはこれが全てだ。血で血を洗ってきた我らには似合いだろう?』
「そうだな……」
世界がガラリと変わると、『声』はワタルの頭に響くのではなく、後ろから掛けられた。うんざりと、嫌そうな表情を隠そうともしないまま、ワタルは振り返り……巨大な鹿のような動物と相対した。
よ
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