幽鬼の支配者編
EP.21 動乱
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「ルーシィ、医者の話では、三人とも命に別状はないそうだ」
「……そう。良かった」
その日の昼、マグノリア病院の病室。安静にしているが、重症の三人の傍で悲しみに俯いていたルーシィは、ワタルの言葉に安堵するも、すぐに顔を曇らせてしまう。
式神を使って三人を病院まで運んだワタル、レビィと仲が良いルーシィ、魔力が枯れて戦えないミラジェーン以外の妖精の尻尾の魔導士たちは、幽鬼の支配者のマスター・ジョゼが滞在しているとの情報のオークの街の幽鬼の支配者支部に、カチコミを掛けに行っている。
「酷いことするんだね、ファントムって」
「……そうだな」
ワタルの返事は平坦で、ルーシィには彼が仲間を傷つけられた悲しみや怒りを感じているようには思えなかった。
彼の事をよく知っている訳では無いが、彼の事を仲間と疑った事は無かった彼女は不審に思い、顔を上げると尋ねる。
「……ワタルはよかったの?」
「なにが?」
「みんなファントムを攻めに行っちゃったんでしょ? エルザだって……一緒に行きたいんじゃないの?」
行きたいさ、まさか今日の内にカチコミに行くなんて思ってもいなかった……そう肯定してくれればよかった。それなら、ワタルが感情を押し殺して我慢している事に気付けなかった事を謝ればいいだけなのだ。
だが、そうではなかった。
『ワタル、隣いいか?』
『ん? あ、ああ……っておい、そんなにくっつくな』
『嫌か?』
『――――ねえけど……』
『んー? 聞こえないぞ?』
『この距離で聞き逃す訳ねえだろ、ったく……あーもう、嫌じゃないって言ったんだよ!』
ワタルの顔は……昨日エルザと口づけを交わそうとして、それが未遂に終わった後、彼女と恥ずかしげに笑い合っていた男のものとは思えないほどに……
「別に……全員がこの街を出て行くわけにはいかねえだろ」
言葉とは裏腹に、ワタルの顔はルーシィが悲しく思うくらい、一片の揺るぎも無い無表情だった。
「……そうね」
「俺の事はいい……それよりルーシィ、酷い顔だぞ。一度帰ったらどうだ」
「うん。そうさせてもらうわね」
だが……ワタルの提案に頷いて立ち上がる時に、ルーシィは見た。
力んで白くなるほどに、組んでいた腕を握りしめていた彼の手を。
「(何やってるんだか、あたし……ワタルだって、怒ってない訳無いのに……)」
仲の良かったレビィが傷つけられて思考が暗くなっていたと、ルーシィは反省しながら、病室を出る際に振り返った。
「どうした、ルーシィ」
「……エルザが好きになるのも、分かる気がするな」
「な!?」
「ほら
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