幽鬼の支配者編
EP.21 動乱
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の前で騒いでたら、そりゃ心配して出てくるよなぁ……)」
騒いでいたのは感情を暴走させたエルザだけなのだが、彼女を責める気にもなれず……かといって続きをするにはムードをこれでもかというほどに壊されており、そんな空気でする度胸は、ワタルには無かった。
「……あの、えっと……その……」
彼女もショックが大きかったようで、口を開いても支離滅裂な言葉しか出てこない。
ついさっきまでの甘い空気に包まれていたとは思えない、あんまりとしか言えない空気に、なんかもう考えるのも面倒くさくなってしまったワタルは溜息を吐くと歩き出し……
「ん……」
「……!?」
エルザの横を通る際に、彼女の頬に軽く唇を当てた。考えるのを止めたというより、ネジが飛んだという方が正確か。
目を白黒させながら再起動した彼女は振り返り、家に入ろうとしている彼を見た。
その視線を感じたワタルは振り返ると、吹っ切れたように爽やかな笑みで唇に人差し指を当てながら言う。
「続きはナツ達がいなくなった後でな」
「? ……!? お、おおおまっ、おま……」
「じゃあ、お前も早めに入れよー」
何を言われたのか理解したエルザが顔を真っ赤にして、壊れたラジオの様に口をもつれさせてしまう。
「あ……あう、うぅ……」
ワタルが先に家の中に消えてしまっても、彼女は赤い顔でその場に立ち尽くし、唇の感触が残っている頬を撫でていた。五年前……ワタルのS級昇格祝いの帰りに同じ場所でキスした事を思い出してしまったのだ。
だが、ワタルの言葉が実行される事は無かった。
翌日の朝、マグノリアの南口公園の大樹に、妖精の尻尾の中堅チーム、“シャドウ・ギア”のメンバーであるレビィ、ジェット、ドロイが満身創痍で意識を失い、磔にされていたのが発見されたのだ。
レビィの腹には、幽霊を模した模様……幽鬼の支配者のギルドマークが刻まれていた。
「ボロ酒場までなら我慢できたんじゃがな……」
普段のフランクな格好ではなく、白と金の聖十の正装に身を包み、杖を突く音を響かせて公園にやってきたマカロフは、ギルドメンバーの無残な姿に顔を手で覆い、悲しみに身体を震わせる。
当然、彼の心を満たすのは悲しみだけではない。
隠しきれない怒りを漏らすマカロフの握力に耐えられず、杖が粉々になる。
「ガキの血を見て、黙ってる親はいねぇんだよ……戦争じゃ……!!」
レビィ達の報せを受けてこの場に集まった妖精の尻尾の魔導士やマグノリアの住人が聞いた事も無い、まるで地獄の底から響いてくるような凄まじい怒りの声とともに、マカロフは幽鬼の支配者との開戦を告げるのだった
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