幽鬼の支配者編
EP.21 動乱
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拠? それにくれって……今ここで、か?」
「ああ」
ワタルも、ここで彼女の意図を図り違えるほど鈍いつもりではなかった。
流石に面食らい、目を泳がせるワタルに、エルザは内心で溜息を吐く。
「……お前が優しい奴だって、分かってるさ。でも……」
「分かった」
「私の事を…………え?」
私の事を気遣ってそういう事を言うのは止めろ……そう言おうとしたエルザだったが、しっかりしたワタルの返答に、それは跡形も無く吹き飛んでしまう。ついでに心臓の鼓動も一拍どころか五拍くらいすっ飛ばしたかもしれない。
聞き返した彼女に、ワタルは顔を赤くしながらも、もう一度答えた。
「分かったって言ったんだよ。いいから目を閉じろ、恥ずかしい」
「……マジか」
「マジだ」
何も考えられずに、本当かどうか問えば即答で返され、エルザは心を掻き乱され、頭が沸騰しそうになってしまう。
ガルナ島での誓いは何だったのか。
そもそもナイーブなくせに、なんでもう立ち直ってるのか。
そして……本当に、自分はワタルとそうなってもいいのか……。
さまざまな激しい感情が頭を駆け巡り、思考がショートしそうになって何の反応も返さないエルザに焦れたワタルは、彼女の両頬を両手で優しく挟むと、目と目を合わせた。
「ッ!!」
「エルザ。流れとか、仕方なくとかそう言うのじゃない……俺の本心だ」
瞳を揺らして動揺していたエルザだったが……ワタルの言葉に心が波一つ無い水面の様に静かになると、彼の姿以外は見えなくなり、周りの音が彼女の世界から消える。
覚悟を決めたワタルの真剣な視線に、もうどうにでもなれと開き直ったとも言う。
漸く目を閉じたエルザに、ワタルは今更ながらに緊張してしまう。
深呼吸して、爆発しかねないほどに早鐘を打つ心臓を鎮めようとしても効果はあまりなかった。それでも、後には引けないと覚悟を決め、ゆっくりと顔を近づけていく。
ふと見れば、エルザも緊張で体を固くしているのが分かる。肩を震わせているのも寒さゆえではないだろう。
そんな彼女を一層愛おしく思ったワタルは、一気に唇を重ねようとしたのだが……
「ねえ、何やってる……の……?」
女性特有の高い声がエルザの後方から掛けられ、不思議なほど静かだった世界は壊れてマグノリアの街の音が復活する。
「……」
「……」
「……」
だというのに、三人の周りは嫌な静寂で包まれていた。
声の主・ルーシィは声を尻すぼみに小さくしていくと、顔をどんどん赤くしていく。
「ご、ごごごごめんなさーい!!」
真っ赤な顔で謝って家の中に消える彼女を見て、呆然自失していたワタルは漸く正常な意識を取り戻した。
「(まあ……家
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