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乱世の確率事象改変
龍が最期に喰らうモノは
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していたと知られれば、大陸に蔓延した英雄たちの逸話は全て掻き混ぜられた上で、曹操軍に悪い方へと裏返る。
 そうなればどうなる……決まっている。
 黄巾の乱が可愛く思える程の民の暴動が相次ぎ、迅速に世を平定しようと動いている華琳にとっては非常に望ましくない事態に陥る……だけならまだしも、連合の再発足など可愛らしい、大陸の勢力全てを敵に回すどころか、内部からさえ刃が向けられるやもしれないのだ。
 信用も、信頼も……疑心暗鬼によって泥の中に沈むだろう。特に袁家との戦前のこの時機は最悪であった。

 匂わせる事すら危ういのが今の言で確かになった。
 嘗て平穏の為にと立った主を、必死に守ろうとしていた月の事を自ら貶めてまで劉表の手助けをしている陳宮が……些細な希望に縋ろうとするだろうか。

――陳宮には月の事で離間計を仕掛ける事は出来る。しかし……劉表にバレる可能性が捨てきれない。月と詠を徐晃と共に送ったのが裏目に出たわね。いや……二人が居たとしても徐晃と共にいる事により、もう嘗ての自分達が慕った主では無いのだと衝撃を受けて、逆に利用される可能性さえある、か。

 人の心を全て読むことなど出来はしない。全てが思い通りに進むなどもっての他だ。自分がしてきた事が無駄になるのは、どのような方向に思考を向けるか分からない。
 秋斗が絶望の淵に記憶を失った事が、華琳にとってはその確たる証拠である。
 分の悪い賭けを打つのは此処では無い。
 董卓の嘗ての臣下が主を貶めるのか……とも此処では言う事が出来ない。真実を知るモノは少なく、この謁見の情報をわざと外部勢力に開示している華琳が触れる事では無いのだ。
 劉表との謁見に於いて、最も警戒するのは孫呉。次いで西涼と袁家。最後に劉備。どれしもに波紋を広げる選択をするのが得策である。

「……ならば娘の頸を持って来るがいい。正統な後継が一人しかいない、そんなモノは言い訳に過ぎない。娘に王の器が無いのは分かったのだろう? 後継には分家からでも変わりを立てて、幼くとも育てる、ということも出来るのだから。学問を奨励している劉表殿の血族ならば、一人くらいは原石がいてもおかしくは無い」

 厳しく突き刺さる声に陳宮は眉を寄せる。内政干渉に触れそうで触れない言い方に狡さを感じて。

「目覚めるより前に劉備の元に行った為に、謝罪に行けと文を送ったのですが返答は無し。故に我が主が身体の無理を押して尻拭いに来た次第なのです。これを……」

 そう言って、陳宮は包みを取り出した。
 巻かれた布が捲られ、露わになった木箱の蓋が開かれた。その蓋の上に……陳宮の白くて細い手によって、中身の頸が一つ乗せられる。

「暴走の主犯、黄祖の頸になるのです。一族郎党の頸も刎ねて参りましたが、お見苦しい為、塩漬けにして部隊の場
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